第3話

文字数 361文字

「私、今日用事あっから」

エツ子とは昇降口でそう言って別れた。
最近お熱の彼氏とデートらしい。

力なく灯る薄暗い照明を見て、日もすっかり短くなったなと思う。

駅に着き、階段を上がってホームに出たところで、

「あっ」

と声が出た。

階段を登ってすぐのところに、高瀬くんがいたのだ。
しかも、目があった。

どうしよう。
また、顔を伏せて横を抜けようとしたけれど、
エツ子の声が蘇った。

『待ってるだけじゃさ、始まんないよ』

変な間が空いた。
でも、私は高瀬くんの顔を見て、
体のどこか奥底から絞り出すように、

「おつかれ」と言った。

心臓が脈を打つのがわかって、吐きそうだった。

高瀬くんは一瞬きょとんとしたように、口を開けた。

それから、

「おつかれ」と微笑み、
「帰り道一緒だよね」と続けた。
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