起承転結
文字数 2,000文字
ある日、とある村の少年が長年地面に突き刺さっていた聖剣を抜いた。
「おい、神。あの聖剣は勇者にしか抜けないんじゃ無かったのか?」
「うむ……その筈だったのだが、何かの間違いで抜けてしまった様だな」
「そうだよな。あの少年は勇者では無い」
その様子を眺めていた神と邪神は、何とも言えない様子でお互いに顔を見合わせた。
「何かの間違いってあるのか?」
「起こってしまった物は仕方があるまい。だいたいお前が天界に遊びに来ちゃうから私の気が散っちゃったんだし」
「神のクセに俺の所為にする気か?」
村では歓声が上がり少年を勇者と褒め称え始めている。
「さて、どうするか……」
「いや、間違いだったら間違いって言わないと」
「そんなん出来るか? あんなに盛り上がってんだぞ?」
「う……それは……」
神はため息を吐きながら立ち上がった。
「仕方が無い。こうなったらあの少年に勇者になって貰うしか……」
「何だって!? どうするつもりなんだ?」
「私の……神の力であの少年の潜在能力を引き出そう」
「なるほど……力を与えて無理やりにでも勇者として育って貰うんだな。でも本当の勇者はどうするんだ?」
「勇者は私が始末しておこう」
「うわ、酷過ぎる」
神は魔力を開放する。地上で旅を続けている勇者は周りに居た仲間と共に、一瞬の内に消滅した。
「って言うか、あの少年を消滅させた方が早かったんじゃ?」
「え? ……あ」
「神……やっちまったな。本当に考え無しに勢いで行動するから」
「うっさいわい! とにかくあの少年の能力を開放させるぞ」
神は再び魔力を開放する。人々には視認出来ない光が少年を包み込む。
「あれ? あれれ?」
「どうした、神?」
「あの少年……何の能力も持ち合わせていないんだけど」
「何だって!?」
「本当にただのモブキャラじゃねえか!」
どうやら少年は潜在能力すら持ち合わせていないキャラクターだった様だ。
「うむむ、こうなったら仕方が無い」
「おい、神。何をするつもりだ?」
「あの少年に無理やり才能を持たせるんだ」
「な、なるほど。神の力で才能を授けるのか」
神は舌打ちをしながら魔力を開放した。少年に剣技の才能を授けた。魔法の才能を授けた。死んでもお金を半分にして蘇る能力を授けた。レベルの概念を授けた。
「ふう、これだけすれば何とかなるだろう」
「おい、神。大丈夫か? だいぶ力を使ったな」
「そうだな。でもこれ位しないとあのモブ野郎で魔王には勝てんだろう」
「まあ魔王は俺の部下だからな。俺が一言言えば忖度してくれただろうけど」
「……先に言え!」
少年は戦闘を繰り返して、ゆっくりだが強くなっていった。レベルの概念を授けたお陰で、戦い続けてさえいれば絶対に強くなれるのだ。
「おい、邪神」
「何だ、神」
「お前、何でまだ天界に居るんだ?」
「いや、あの少年が気になって……」
「そうか」
「ああ」
少年は洞窟の奥地で伝説の鎧を発見する。これで防御力が爆上げだ。
「あ、しまった」
「どうした、神?」
「伝説の盾なんだが、前の勇者と一緒に消滅させちゃったんだった」
「何だって!? どうするんだ?」
「うむむ……こうなったら仕方が無い」
「何をするつもりだ?」
神はイライラしながら魔力を開放した。神の魔力で伝説の盾が作られる。
「おお、伝説の武具はこうやって作られていたのか。初めて見たぞ」
「はあはあ……」
「おい、神。大丈夫か? かなり力を使ったな」
「そうだな。でもこれで伝説の武具は揃えられる」
「これで後はこの盾を見付けて貰って、魔王を打ち倒すだけだな」
なるべく自然な形で少年が伝説の盾を発見出来るようにした。これで防御力がまた爆上げだ。
「おい、神。伝説の兜ってのは存在しないのか?」
「それは考えもしなかったな」
「良いのか?」
「……作るしか無いのか?」
「頑張れ」
神はゲッソリしながら魔力を開放した。神の魔力で伝説の兜が姿を現した。もう面倒くさいのでそのまま少年に送り届けてやった。これで防御力がまたまた爆上げだ。
「おい、神。大丈夫か? めちゃくちゃ力を使ったな」
「う、ぐぐ……どうやら力を使い果たした様だ。もうダメか……少し眠るとしよう……」
「おい、神――!」
こうして少年は魔界へ乗り込み、見事魔王を打ち倒した。
そう、世界に平和が戻ったのだ。
少年の帰り道に邪神が姿を現した。
「お前が少年……いや、勇者か」
「誰だアンタは?」
「俺は邪神。そして魔王は俺の部下だ」
「何だって!?」
「神はもう死んだ」
「え、何で? アンタが殺したのか?」
流石に間違いでモブキャラに聖剣を抜かせてしまった所為で力を使い過ぎて、その末に魔力切れで死んでしまったとは言えない……
「……そうだ、神を殺したのは俺だ」
本当は少年、お前だけどな。
「何て事を!」
「ふっふっふ、これからは俺が神に代わってこの世界を支配する。止めたければ天界へ来るが良い」
こうして勇者と邪神の最終決戦が始まったのだった。
「おい、神。あの聖剣は勇者にしか抜けないんじゃ無かったのか?」
「うむ……その筈だったのだが、何かの間違いで抜けてしまった様だな」
「そうだよな。あの少年は勇者では無い」
その様子を眺めていた神と邪神は、何とも言えない様子でお互いに顔を見合わせた。
「何かの間違いってあるのか?」
「起こってしまった物は仕方があるまい。だいたいお前が天界に遊びに来ちゃうから私の気が散っちゃったんだし」
「神のクセに俺の所為にする気か?」
村では歓声が上がり少年を勇者と褒め称え始めている。
「さて、どうするか……」
「いや、間違いだったら間違いって言わないと」
「そんなん出来るか? あんなに盛り上がってんだぞ?」
「う……それは……」
神はため息を吐きながら立ち上がった。
「仕方が無い。こうなったらあの少年に勇者になって貰うしか……」
「何だって!? どうするつもりなんだ?」
「私の……神の力であの少年の潜在能力を引き出そう」
「なるほど……力を与えて無理やりにでも勇者として育って貰うんだな。でも本当の勇者はどうするんだ?」
「勇者は私が始末しておこう」
「うわ、酷過ぎる」
神は魔力を開放する。地上で旅を続けている勇者は周りに居た仲間と共に、一瞬の内に消滅した。
「って言うか、あの少年を消滅させた方が早かったんじゃ?」
「え? ……あ」
「神……やっちまったな。本当に考え無しに勢いで行動するから」
「うっさいわい! とにかくあの少年の能力を開放させるぞ」
神は再び魔力を開放する。人々には視認出来ない光が少年を包み込む。
「あれ? あれれ?」
「どうした、神?」
「あの少年……何の能力も持ち合わせていないんだけど」
「何だって!?」
「本当にただのモブキャラじゃねえか!」
どうやら少年は潜在能力すら持ち合わせていないキャラクターだった様だ。
「うむむ、こうなったら仕方が無い」
「おい、神。何をするつもりだ?」
「あの少年に無理やり才能を持たせるんだ」
「な、なるほど。神の力で才能を授けるのか」
神は舌打ちをしながら魔力を開放した。少年に剣技の才能を授けた。魔法の才能を授けた。死んでもお金を半分にして蘇る能力を授けた。レベルの概念を授けた。
「ふう、これだけすれば何とかなるだろう」
「おい、神。大丈夫か? だいぶ力を使ったな」
「そうだな。でもこれ位しないとあのモブ野郎で魔王には勝てんだろう」
「まあ魔王は俺の部下だからな。俺が一言言えば忖度してくれただろうけど」
「……先に言え!」
少年は戦闘を繰り返して、ゆっくりだが強くなっていった。レベルの概念を授けたお陰で、戦い続けてさえいれば絶対に強くなれるのだ。
「おい、邪神」
「何だ、神」
「お前、何でまだ天界に居るんだ?」
「いや、あの少年が気になって……」
「そうか」
「ああ」
少年は洞窟の奥地で伝説の鎧を発見する。これで防御力が爆上げだ。
「あ、しまった」
「どうした、神?」
「伝説の盾なんだが、前の勇者と一緒に消滅させちゃったんだった」
「何だって!? どうするんだ?」
「うむむ……こうなったら仕方が無い」
「何をするつもりだ?」
神はイライラしながら魔力を開放した。神の魔力で伝説の盾が作られる。
「おお、伝説の武具はこうやって作られていたのか。初めて見たぞ」
「はあはあ……」
「おい、神。大丈夫か? かなり力を使ったな」
「そうだな。でもこれで伝説の武具は揃えられる」
「これで後はこの盾を見付けて貰って、魔王を打ち倒すだけだな」
なるべく自然な形で少年が伝説の盾を発見出来るようにした。これで防御力がまた爆上げだ。
「おい、神。伝説の兜ってのは存在しないのか?」
「それは考えもしなかったな」
「良いのか?」
「……作るしか無いのか?」
「頑張れ」
神はゲッソリしながら魔力を開放した。神の魔力で伝説の兜が姿を現した。もう面倒くさいのでそのまま少年に送り届けてやった。これで防御力がまたまた爆上げだ。
「おい、神。大丈夫か? めちゃくちゃ力を使ったな」
「う、ぐぐ……どうやら力を使い果たした様だ。もうダメか……少し眠るとしよう……」
「おい、神――!」
こうして少年は魔界へ乗り込み、見事魔王を打ち倒した。
そう、世界に平和が戻ったのだ。
少年の帰り道に邪神が姿を現した。
「お前が少年……いや、勇者か」
「誰だアンタは?」
「俺は邪神。そして魔王は俺の部下だ」
「何だって!?」
「神はもう死んだ」
「え、何で? アンタが殺したのか?」
流石に間違いでモブキャラに聖剣を抜かせてしまった所為で力を使い過ぎて、その末に魔力切れで死んでしまったとは言えない……
「……そうだ、神を殺したのは俺だ」
本当は少年、お前だけどな。
「何て事を!」
「ふっふっふ、これからは俺が神に代わってこの世界を支配する。止めたければ天界へ来るが良い」
こうして勇者と邪神の最終決戦が始まったのだった。