春うららのエイリニャン

文字数 799文字

 わたしは一等航海士レイ、この星にきて間もない。
地球人が春といっている、この季節は寒暖の差が激しくとても体温調節がむずかしい。
この環境の激変は環境破壊が原因と思われる。
さらにCOVID-19という、この星はじまっていらいの疫病が流行っている。
生物が生きて行くにはとても厳しい環境だ。

「ミナどうしたの!」
 二等航海士ミナがベッドに横たわって固まっている。

 ただ事ではない。

 目はあいているが体は動かないようだ。
 
 いったい彼女になにがおこったのか。
 
 まさかこの星のエイリアンに寄生された!?

「ミナ!」
 わたしは彼女にそっと近づく。

「・・・・・」
 ミナは立てていた膝を左右に広げながら、ゆっくりと伸ばした。
 
 しだいに股のあたりに卵のような物体のシルエットが浮かびあがった。

「まさか、エイリアンの卵・・・・」
 わたしは銃をかまえた。
 
 ミナは止めてほしいと目で訴えかけてくる。
 
 エイリアンを傷つければ強力な酸が飛び散ってミナを危険に晒すことになる。

「ミナ、大丈夫よ。じっとしていなさい」
 わたしは銃をかまえ左手でミナのタオルケットを勢いよく剥いだ。

「シャー」
 子猫エイリニャンだった。
 
 エイリニャンはジャンプして、わたしの顔に飛びついた。
 子猫は覆いかぶさって動こうとしない。

「スーハー……」
 わたしはあまりの心地よさに意識を失いそうだ。
 
 ミナは寒さに凍えていた。
 
 そのときクイーン・エイリニャンがやってきてミナのお腹の上で丸くなると、彼女はまどろみすやすやと眠った。
 
 この惑星の春は厳しい。
 
 だが、エイリニャンがいるかぎり温かな癒やしパワーで、地球人は乗り越えていくのだろう。

「わたしは一等航海士レイ。今からお昼寝モードに入る。以上・・・・」

 エイリニャン、宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえにゃい。
                                       おわり
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