第1話
文字数 2,078文字
魔王が勇者により討伐されて、世界に平和が戻った。
魔王によって封じられていた感情、「恋心」も解放されて、これからの世の中は恋心を抱いた相手と結ばれるようになると人々は大いに喜んだ。
魔王討伐の功績を残した勇者は、国王の一人娘と結婚して次期国王になることになったのだが、「恋心がわからないんだ……」と勇者は旅に出てしまった。
人々は恋愛感情がどんな物なのかわからずに困り果てた。
家族愛や敬愛とも違う感情で、性欲とも話は違うらしい。そんなことが昔の本に書かれているが一向に人々は恋心がわからなかった。
そんな中、人々は勇者と一緒に魔王討伐に尽力した大賢者に相談した。
「では、恋心を可視化できるようにしましょう」
大賢者は、世界中の人々の恋心を可視化して具現化した。
ある人の恋心は、他の相手と結婚した想い人を刺し殺した。
別の人の恋心は、振り返ってくれない相手を絞め殺した。
恋心は、浮気相手を殺したり結婚に反対する人を殺したりもした。
両想いになると二人の恋心が絡み合い美しく輝く。
人々はそうなれる相手を探すようになった。
「カール、今日もお弁当作ったよ」
私は奇跡的に、同じ魔術学校の生徒だったカールと両想いになれたのだ。
カールは学年で一番勉強ができて優しくて格好良くて、何よりも私を愛してくれている。
「ありがとう……」
なのに最近のカールは私からほんの少し目を逸らす。
ずっとカールだけを見てきた私にはわかってしまう。
「夕飯食べにくるよね? カールの好きなポトフ作っちゃおうかな」
「あ、今日は用事があるからごめんね」
最近のカールはずっとこれだ。
だけど、私とカールの恋心は今日も綺麗に結ばれているのだから安心している。
図書館で勉強をしていたら、書棚の影にカールを見かけた。
こっそり覗くと、カールは一つ歳上の先輩と抱き合ってキスしていた。
その先輩とカールの恋心はキラキラとリボン結びで綺麗に結ばれていたのだ。
私は結婚するまでキスもしたくないと言ったのに、カールがそんな貞操観念は古いと言って私を抱いた。私も、カールと結婚するだろうし遅かれ早かれすると思って体を許した。
なのに、カールは先輩の大きな胸を揉みながら腰を振ってキスを繰り返していたのだ。
カールが「中に出すよ」なんて言い、先輩の「赤ちゃんできたらどうする?」との言葉に「結婚しよう」とカールは当然のことのように答えた。
先輩は「あなた婚約者いるでしょ?」と私の存在を知っているらしい。
カールは「二十歳も歳上の未亡人と政略結婚なんて耐えられないよ。俺は君を愛してる」なんて言いながら腰を振った。
この国は五百年前に一夫一妻制になった。
国王だってそれを破ってはならないのだ。
私はカールと教会で婚約の誓いを立てた。
それなのに、どうして?
私はそれから毎日カールを尾行した。
カールは娼館に行き、口減らしに売られたガリガリの処女を買っては「俺は大貴族の跡取りなんだ。跡を継いだら君を身請けして夫人にするから」とか言って信用させて、キラキラした恋心を結んで好き放題抱いていた。
カールは勉強ができるから特待生として入学した平民だ。
可愛いと評判の花屋の娘を見かければ恋心を向けてちょっかいを出し、恋心をキラキラと結んで抱いていた。
カールは誰にでも恋心を向けられる人のようだ。
私が十日尾行したところ、カールは十三人の女性と関係を結んでいた。
その内九人はカールと初対面だったのに、彼の顔の良さや向けられる恋心に絆されて恋心を結び体まで許してしまっていたのだ。
その内三人は巨乳の美女で、カールは楽しそうに胸を揉んで「君との赤ちゃんが欲しい」とか言って好き放題していた。
残り一人は既婚者で、カールにお小遣いを渡して濃厚な関係を結んでいた。
カールは一番好きなのは巨乳の美女。だけどそれだけでは物足りないのか、男を知らない女を抱いては捨てているようだ。
カールに一番想いを寄せているお金持ちの夫人を財布にして、身なりを整えて貴族のふりをして女を物色しているのだろう。
私は、もう十日もカールと会っていない。
私は、捨てられたの?
私は美人でもないし胸も大きくない。
そうか、私を溺愛してくれていたのは研究の手伝いをしていた時だった。
私は利用されただけなのだ。
私はカールの恋人の夫人の夫に密告した。
カールは「匿ってよ! 変な人に追われてて」と私のところへノコノコやってきた。
当然のように私の恋心と結びついてキラキラするカールの恋心が白々しく見える。
オーロラカラーで眩いカールの恋心の美しさと、彼の本心や誠実さはまったく釣り合っていない。
「カール、あなたは私を愛してるの?」
「もちろんだよ!」
「そう……。じゃ、ちゃんと受け止めてね」
私はカールを愛していた。こんなクソ野郎でもすごく優しくて大好きだった。いや、誤魔化せない。私はこんなカールでも愛している。
私の恨みつらみで膨らんだ恋心は、カールに大きく覆い被さった。
「嘘つき」
私の膨大な恋心に、カールは溺死した。
魔王によって封じられていた感情、「恋心」も解放されて、これからの世の中は恋心を抱いた相手と結ばれるようになると人々は大いに喜んだ。
魔王討伐の功績を残した勇者は、国王の一人娘と結婚して次期国王になることになったのだが、「恋心がわからないんだ……」と勇者は旅に出てしまった。
人々は恋愛感情がどんな物なのかわからずに困り果てた。
家族愛や敬愛とも違う感情で、性欲とも話は違うらしい。そんなことが昔の本に書かれているが一向に人々は恋心がわからなかった。
そんな中、人々は勇者と一緒に魔王討伐に尽力した大賢者に相談した。
「では、恋心を可視化できるようにしましょう」
大賢者は、世界中の人々の恋心を可視化して具現化した。
ある人の恋心は、他の相手と結婚した想い人を刺し殺した。
別の人の恋心は、振り返ってくれない相手を絞め殺した。
恋心は、浮気相手を殺したり結婚に反対する人を殺したりもした。
両想いになると二人の恋心が絡み合い美しく輝く。
人々はそうなれる相手を探すようになった。
「カール、今日もお弁当作ったよ」
私は奇跡的に、同じ魔術学校の生徒だったカールと両想いになれたのだ。
カールは学年で一番勉強ができて優しくて格好良くて、何よりも私を愛してくれている。
「ありがとう……」
なのに最近のカールは私からほんの少し目を逸らす。
ずっとカールだけを見てきた私にはわかってしまう。
「夕飯食べにくるよね? カールの好きなポトフ作っちゃおうかな」
「あ、今日は用事があるからごめんね」
最近のカールはずっとこれだ。
だけど、私とカールの恋心は今日も綺麗に結ばれているのだから安心している。
図書館で勉強をしていたら、書棚の影にカールを見かけた。
こっそり覗くと、カールは一つ歳上の先輩と抱き合ってキスしていた。
その先輩とカールの恋心はキラキラとリボン結びで綺麗に結ばれていたのだ。
私は結婚するまでキスもしたくないと言ったのに、カールがそんな貞操観念は古いと言って私を抱いた。私も、カールと結婚するだろうし遅かれ早かれすると思って体を許した。
なのに、カールは先輩の大きな胸を揉みながら腰を振ってキスを繰り返していたのだ。
カールが「中に出すよ」なんて言い、先輩の「赤ちゃんできたらどうする?」との言葉に「結婚しよう」とカールは当然のことのように答えた。
先輩は「あなた婚約者いるでしょ?」と私の存在を知っているらしい。
カールは「二十歳も歳上の未亡人と政略結婚なんて耐えられないよ。俺は君を愛してる」なんて言いながら腰を振った。
この国は五百年前に一夫一妻制になった。
国王だってそれを破ってはならないのだ。
私はカールと教会で婚約の誓いを立てた。
それなのに、どうして?
私はそれから毎日カールを尾行した。
カールは娼館に行き、口減らしに売られたガリガリの処女を買っては「俺は大貴族の跡取りなんだ。跡を継いだら君を身請けして夫人にするから」とか言って信用させて、キラキラした恋心を結んで好き放題抱いていた。
カールは勉強ができるから特待生として入学した平民だ。
可愛いと評判の花屋の娘を見かければ恋心を向けてちょっかいを出し、恋心をキラキラと結んで抱いていた。
カールは誰にでも恋心を向けられる人のようだ。
私が十日尾行したところ、カールは十三人の女性と関係を結んでいた。
その内九人はカールと初対面だったのに、彼の顔の良さや向けられる恋心に絆されて恋心を結び体まで許してしまっていたのだ。
その内三人は巨乳の美女で、カールは楽しそうに胸を揉んで「君との赤ちゃんが欲しい」とか言って好き放題していた。
残り一人は既婚者で、カールにお小遣いを渡して濃厚な関係を結んでいた。
カールは一番好きなのは巨乳の美女。だけどそれだけでは物足りないのか、男を知らない女を抱いては捨てているようだ。
カールに一番想いを寄せているお金持ちの夫人を財布にして、身なりを整えて貴族のふりをして女を物色しているのだろう。
私は、もう十日もカールと会っていない。
私は、捨てられたの?
私は美人でもないし胸も大きくない。
そうか、私を溺愛してくれていたのは研究の手伝いをしていた時だった。
私は利用されただけなのだ。
私はカールの恋人の夫人の夫に密告した。
カールは「匿ってよ! 変な人に追われてて」と私のところへノコノコやってきた。
当然のように私の恋心と結びついてキラキラするカールの恋心が白々しく見える。
オーロラカラーで眩いカールの恋心の美しさと、彼の本心や誠実さはまったく釣り合っていない。
「カール、あなたは私を愛してるの?」
「もちろんだよ!」
「そう……。じゃ、ちゃんと受け止めてね」
私はカールを愛していた。こんなクソ野郎でもすごく優しくて大好きだった。いや、誤魔化せない。私はこんなカールでも愛している。
私の恨みつらみで膨らんだ恋心は、カールに大きく覆い被さった。
「嘘つき」
私の膨大な恋心に、カールは溺死した。