第1話

文字数 1,597文字

「みらん」は、おかあさんのことがだいすきな、おんなのこ。
 だって、おかあさんは、いだいなまじょで、むらのひとびとにあいされていますから。
「わたしも、おかあさんみたいに、すてきなまじょになりたいな……。」
 おかあさんは、まほうでびょうきをなおすくすりをつくったり、かぜにのってそらをとんだりもできるのです。
 もりがおおかじになったときは、まほうでみずをだして、ひをけしさったこともありました。
「おかあさん。わたしにもまほうをおしえて。」
「みらん。まほうはだれにでもつかえるわけじゃないわ。きびしいしゅぎょうがひつようなのよ?」
 おかあさんにそういわれても、みらんはあきらめきれません。
「さいごまでがんばるから!」
 みらんのけっしんは、いわのようにかたいものでした。
「わかったわ。では、しゅぎょうをはじめましょう。」
 とうとう、おかあさんもみとめてくれました。
 どんなしゅぎょうかと、わくわくするみらんでしたが……。
「わたしのおてつだいをすること。おりょうりにおせんたく、おそうじも。おつかいにもいってもらおうかしら。」
「えっ! それがしゅぎょう?」
 みらんはがっかりしましたが、いうとおりにするしかありません。
「がんばっておてつだいすれば、まほうをおしえてもらえるんだわ。」

 それからは、みらんはひっしにおてつだいしました。
 おりょうり。おせんたく。おそうじ。おつかいにだっていきました。
 だけど、おかあさんは、いつまでたってもまほうをおしえてくれません。
「おてつだいばっかり! もういやだ!」
 みらんはおつかいのとちゅうで、おはなばたけによりみちしました。
「おつかいなんて、かぜのまほうをつかえたら、ひとっとびなのに……。」
 おかあさんのまねをして、まほうのじゅもんをとなえてみます。
「かぜよ、いまこのときにふけ!」
 もちろん、なにもおきません。
「しゅぎょうなんて、やーめた。」
 みらんは、おはなばたけにねころんでしまいました。
 そのとき、わるいせいれいが、みらんにちかづいてきて、ささやくのでした。
「そうそう。まじょのしゅぎょうなんてやめてしまえ。」
「そうね。やめましょう。しゅぎょうだなんていって、おてつだいばかりさせるんだもの。」
 みらんは、わるいせいれいのことばにうなずきます。
「それがいい。きみのおかあさんは、さいしょからまほうをおしえるきなんてなかったのさ。」
 わるいせいれいがわらうと、みらんは、おかあさんのすがたをおもいうかべました。
 かんがえてみると、おかあさんははたらきものでした。
 おりょうりも、おせんたくも、おそうじも、おかいものにいくときだって、まほうをつかったことはありません。
「おかあさんがまほうをつかうのは、だれかをたすけるためだわ!」
 みらんは、さっとたちあがりました。
 そのしゅんかん、よきせいれいたちがあらわれたかとおもうと、みらんをしゅくふくするではありませんか!
「みらん。よくきがついたね。」
「まほうは、じぶんがらくをするためにつかうものではないわ。」
「いっしょうけんめいで、やさしいまじょに、われわれがちからをかしてあげるのよ。」
 よきせいれいたちが、えがおでみらんにおしえてくれます。
「こんなやつらのいうことはきくな! しゅぎょうなんて、いみはないんだ! なまけてしまえ!」
 わるいせいれいは、おおごえでさけびました。
 でも、みらんにまよいはありません。
「そうやって、ひとのがんばるきもちをばかにしないで!」
 みらんは、かぜのまほうのじゅもんをとなえます。
「かぜよ、いまこのときにふけ!」
 ごうっと、つよいかぜがふき、わるいせいれいをふきとばしてしまいました。
 かぜのせいれいが、ちからをかしてくれたのです。
 みらんはおれいをいうと、
「わたし、おつかいにいかなくちゃ!」
 と、はしりだしました。
 まじょのしゅぎょうは、はじまったばかりです。

 おわり

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