第1話

文字数 1,599文字

 ろみちゃんがすむまちのみんなはまほうがつかえます。おかあさんはおいしいけーきをつくるまほう、おとうさんはおもしろいおはなしをするまほう。せんせいも、おともだちも、となりのいえのおじいさんも、みんなそれぞれすてきなまほうがつかえます。
 ろみちゃんはおはながだいすきでした。なので、いつかおはなのまほうがつかえるようになれたらいいなあとおもっていました。まちにはかだんがあります。そこで、ろみちゃんははるもなつもあきもふゆも、たくさんのおはなをそだてました。

 さくらたんぽぽ、ぴんくひまわり、あかいきんもくせい、ゆきいろのばら。

 おはなはとてもうつくしくさきました。
「きれいだわ」
「いいかおりがして、げんきになれるね」
「ろみちゃんはおはなのまほうがつかえてすごいなあ」
 まちのみんなから「ありがとう」といわれて、ろみちゃんはうれしくなりました。もっとたくさんおはなをそだてたいとおもいました。

 ところで、ろみちゃんにはなやみがあります。それはどんなにたいせつにそだてても、おはながかれてしまうことです。かれてしまったら、またきれいにさかせることができます。でもいちどさいたものをわすれてしまうきがして、さみしくなります。
「わすれないほうほうはないのかしら? 」
 ろみちゃんはたくさんかんがえました。だけどさっぱりおもいつきませんでした。

 あるひ、ろみちゃんはおとうさんによばれました。
「おひめさまがろみに会いたがっているよ」
「まあ、おひめさまが! 」
「おはなのおはなしをききたいそうだよ」
 ろみちゃんはどきどききんちょうしました。なかよくなれるかしら。たのしくおしゃべりできるかしら。
 おかあさんはにじいろのはこに、にわでとれたしろいおはながついたべりーをいれました。それはろみちゃんがはじめてそだてたおはなで、まいとしはるにおいしいみがつきます。
「だいじょうぶ。おひめさまとぜったいになかよくなれるわ」
 ろみちゃんはべりーをもっておしろへむかいました。

 おしろにつくと、おひめさまがでむかえてくれました。
「はじめまして。ろみです」
「りりあといいます。ぜひなまえでよんでください」
 りりあさんはりんごのこうちゃと、ほしのかたちのちょこれーとをくれました。ろみちゃんもおかえしにべりーをわたすと、とてもよろこんでくれました。
 りんごのこうちゃをのみながらおしゃべりしました。りりあさんはおはなのまほうと、まちのおはなをたくさんほめてくれました。
「りりあさんはどんなまほうがつかえるのですか? 」
 きっとすてきなまほうがつかえるにちがいないとおもい、たずねてみました。しかしりりあさんはかなしそうにいいました。
「わたしはまほうがつかえないのです」
「このせかいにまほうがつかえないひとはいませんよ! 」
「でもつかえないのです・・・。さあ、きょうはありがとう。またおはなのおはなしをきかせてくださいね」 
 りりあさんはかえるときにぷれぜんとをくれました。ろみちゃんはおうちまでのかえりみち、りりあさんのまほうについてかんがえました。

 おうちについてぷれぜんとをあけるとびっくり!ろみちゃんがそだてたおはながかいてあるえでした。いろあざやかにきらきらとかがやいています。
「りりあさんはえがかけるまほうだわ! 」
 すぐにろみちゃんはおしろへいき、まほうのことをおしえてあげました。
「おはなのえをたくさんかいてください。とてもすてきなものになります」
「うれしいわ。ありがとう」
 りりあさんはなみだをながすほどよろこび、ふたりはとてもなかよしになりました。

 ろみちゃんのおはなを、りりあさんはえにします。きせつがかわり、おはながかれてしまってもえとしてのこりつづけ、わすれられることはありません。
「おはなもよろこんでいるわ」
 まちにはうつくしいおはなとうつくしいえがあふれており、みんなをしあわせにしているのでした。
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