第一章 内面との葛藤

文字数 1,771文字

宮本将也は、その明るく笑顔で満ちた外見からは想像できないほど、内面には暗い影を抱えていた。彼は友人たちの間でポジティブで楽観的な男として知られており、常に周りに明るさをもたらす存在だった。しかし、彼の心には自己評価が異常に低く、過去の傷からくる女性への不安が深く根付いていた。

 ある晩、将也は友人の一人、大橋と地元の居酒屋で飲み物を楽しんでいた。カウンターの前でビールを注文し、大橋は将也をじっと見つめた。

「将也、最近どうだい?」

「もう絶好調よ!」

 将也は微笑みながら答えたが、その笑顔は表面的なものに過ぎなかった。彼は内面で、自分が他の人々に愛されないと感じていたことに悩んでいた。大橋はそれに気付いたのか、彼の目に何かを読み取ろうとしていた。

「元気そうだな。でも、最近どんなことで悩んでるんだ?」

 将也は一瞬驚いたような表情を見せたが、その後、深いため息をついた。

「大橋、みんなが俺をポジティブで明るいナルシスト野郎だと思ってるけど、実は自分に自信が持てないし、女性に対して卑屈な考えを抱いてしまうよ。」

 大橋は理解を示し、彼の肩を軽く叩いた。

「それは誰にでもあることだ。でも、お前は素晴らしい人間だし、愛される価値がある。過去の傷を乗り越える方法はあるんだ。」

 将也は大橋の言葉に救われたような気持ちになり、彼の言葉に感謝した。しかし、内面の葛藤はまだ解決されていないことを自身も知っていた。

 過去の出来事が将也の心に深い傷を残していた。将也は大橋と出会う以前、いじめられっ子だった。友達はいたが孤独を感じる事が多かった。女子からは〈キモい〉〈ウジ虫〉などの心無い言葉をかけられ、男友達は同性同士の時はそれなりに仲が良かったが、異性がいたり、町中に出ると将也は邪魔だと言わんばかりに除け者にされた。

 そのため自己評価の低さからくる不安と過去の失敗に苦しんだ。特に、女性に対しては臆病で、自分が愛されるに値しないという信念が彼を苦しめていた。大橋と一部の友人たちはそれに気付いていたが、将也はそれを打破しようとする気持ちを持ち続けていた。

 将也はその後も大橋と楽しい時間を過ごし、ポジティブな姿勢を表面上保っていた。しかし、彼の内面では不安の種が根付いており、時折、孤独感に襲われることがあった。

 昔から将也は友人との会話の中で、自分の過去の経験や感情を匂わせることがあった。彼は過去の傷を忘れることができず、それが彼の内面の葛藤を助長していた。友人たちは彼の強さを称えつつも、彼が抱える苦悩を理解していた。

 大橋はビールを喉ごしよく飲み干し、深くため息をついた。そして、静かに将也に向かって言った。

「将也、お前は努力家で魅力的な男だよ。それを自覚する日が来ると信じてる。」

 将也は感謝の気持ちで大橋を見つめた。内心、優しさから来る言葉なだけだと思っていた。大橋はそれに気付いたようで、彼に微笑んで続けた。

「でも、お前が自信を取り戻すためには、もっと積極的に行動する必要があるんじゃないかな?」

 将也は首をかしげた。「積極的に行動?」

 大橋は頷き、言葉を続けた。「そうだ。お前の不安や自己評価の低さは、ただ立ち向かうだけじゃなく、積極的に克服することでしか解消されないかもしれない。」

 将也は考え込みながら、大橋の言葉に耳を傾けた。どのようにしてそれを実現するかを知りたいと思っていた。

 大橋はさらにアドバイスを続けた。「例えば、マッチングアプリでもやってみろよ。新しい人と出会うことで、自信を取り戻す一歩になるかもしれない。」

 将也は初めてそのアイデアを聞いて、驚きと不安の表情を浮かべた。「マッチングアプリ?それはどうだろう?」

 大橋はにっこり笑いながら続けた。「そうだ、お前には素晴らしい魅力があるんだから。自分をもっと多くの人に見てもらうチャンスだ。逃すべきじゃない。」

 将也は大橋の言葉に勇気づけられ、新たな可能性を考えることに決めた。マッチングアプリを試してみることは、彼にとって自己評価を高め、女性に対する不安を打破する一歩になるかもしれないと感じた。
「やってみるか」

 大橋は将也の決断を応援し、彼が自分自身の魅力を発見し、前向きになれる旅路を進むことを願っていた。将也は大橋の言葉を胸に、一歩踏み出すことに決めたのである。
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