みずらくないがかきづらい

文字数 403文字

「教授、何ですか、その古い手紙?」
「ああ、明治時代の挿絵画家と歴史家の間でやりとりされた手紙だよ。長年、この件を調べてきて、ようやく子孫の家に残されていた事が判ったんだよ」
「へっ?」
「『みずら』って有るだろ? ほら、日本神話関係の絵や弥生時代の想像図で、男がやってる、あの独特の髪型……」
「ああ、あれですか……」
「実は、『みずら』と云う髪型は古事記や日本書紀には名前だけは度々出て来るが、どんな髪型だったのかの解釈は、江戸時代まで一定してなかったんだよ」
「へっ……? ああ、そう言われてみれば、変な髪型ですよね……」
「で、今の日本人がイメージする『みずら』のイメージそのままの絵を最初に描いたのが、この挿絵画家だったらしいんだが……ん? おい……何だ、こりゃ?」
「えっ? 何か変な事が書かれてたんですか?」
「『すいません、耳を写実的に描くのが面倒くさかったので、耳が隠れるような髪型にしました』だとさ……」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み