親友

文字数 777文字

随分と離れてしまったな。
友人から送られてきたメッセージを見て思った。

彼女とは幼い頃からの付き合いで、両親に言えないような事もお互い知っているような仲だった。メッセージに添付された画像には彼女と、彼女にそっくりな可愛らしい女の子が笑顔で写っていた。幸せそうな二人を見て、思わず笑みが溢れる。
実際は彼女との距離が離れた訳ではないのだろう。お互いの事だけを考えていられた学生時代はとうの昔に過ぎ去り、嫌でも周りを巻き込み巻き込まれ、自身の思いや感情だけで選び取ることをしなくなっただけだ。今でも私は彼女を大切に思っているし、これからも変わらないだろう。
成長していく中で、友情とは違うベクトルの関係性を見つけ、互いに家庭を持った。私がしてきたように彼女が自身の愛するものを優先するのは当たり前であり、そこに善悪はない。しかし「過去との差異」を感じて心臓の裏側がほんの少しだけ痛むような寂しさや切なさを感じているのも紛れもない事実だった。それはまだ門限があった頃の夕暮れに染まる世界の中で「また明日ね」と手を振った後の寂しさに似ていた。

この痛みをほんの少ししか感じなくなったのも、うまく言語化できずに自分も相手も傷付ける事がなくなったのも、痛み自体を相手に伝えなくなったのも、私が変化した証拠だ。
彼女との間に感じる寂しさも痛みも慌ただしく流れる日常に戻れば飛散して消える儚いものであり、しかし、今この瞬間の全てでもあった。

窓から射し込む陽の光が柔らかなベールのように反射し、きらきらと、きらきらと光っていた。ゆっくりと流れるベールの向こう側で無邪気に笑い合う女の子達が見えたような気がして、静かに目を閉じる。
携帯に彼女からの返事が来ていることには気がついていたが、それはもう開かずに、ただただ私の大切な友人がその子供と共に穏やかに過ごせることだけを静かに願った。


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