第1話
文字数 683文字
目覚めると耳元にプリンの大きなため息がかかった。私の目覚めに合わせるようにプリンも目覚め布団の中で伸びをする。
「プリン、起きよう。今日もまた始まってしまったよ。」
目覚めたプリンはすぐさま私の口をなめしっぽを振り回し今日の一日の始まりをすでに喜んでいる。その喜びに励まされるように、私の一日も始まった。
「古希」というのが数え年で決まるというのがわかり、69歳になる私が今年「古希」を迎えるという事実を遅ればせに知ったのは昨日のことだった。長年勤めているクリニックの人手不足という事情と培ってきた経験の賜物でなんとか仕事ができていることから、この歳まで辞めずに看護師を続けてくることができた。
「佐枝子さん、もうすぐお誕生日ですよね。古希の御祝いしなくちゃね」
信彦先生が笑いながら言って下さって自分がその年齢に達していることを私は知ったのだった。新人で勤め始めた時の院長はとっくに隠居され、2代目となる若先生信彦先生のもとで働いてすでに15年余りが過ぎていた。
「使い者にならないと思ったら言って下さいね」とお願いし、そのたびに「いやいや、まだまだですよ。若い人にはない味があるからな、佐枝子さんは」と言っていただいてなんとか続けてきたが、「古希」という事実は思いもかけない重さと大きさで私をびっくりさせた。あらためて年をとっているということを実感させられてしまったのだ。
天職としてきた看護師という職業人生と私という人間の人生の残りが見えてきた今、そのことと向きあうときが来たのだと、良くも悪くも過ぎてきた日々を総括するときが来たのだと思った。
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「プリン、起きよう。今日もまた始まってしまったよ。」
目覚めたプリンはすぐさま私の口をなめしっぽを振り回し今日の一日の始まりをすでに喜んでいる。その喜びに励まされるように、私の一日も始まった。
「古希」というのが数え年で決まるというのがわかり、69歳になる私が今年「古希」を迎えるという事実を遅ればせに知ったのは昨日のことだった。長年勤めているクリニックの人手不足という事情と培ってきた経験の賜物でなんとか仕事ができていることから、この歳まで辞めずに看護師を続けてくることができた。
「佐枝子さん、もうすぐお誕生日ですよね。古希の御祝いしなくちゃね」
信彦先生が笑いながら言って下さって自分がその年齢に達していることを私は知ったのだった。新人で勤め始めた時の院長はとっくに隠居され、2代目となる若先生信彦先生のもとで働いてすでに15年余りが過ぎていた。
「使い者にならないと思ったら言って下さいね」とお願いし、そのたびに「いやいや、まだまだですよ。若い人にはない味があるからな、佐枝子さんは」と言っていただいてなんとか続けてきたが、「古希」という事実は思いもかけない重さと大きさで私をびっくりさせた。あらためて年をとっているということを実感させられてしまったのだ。
天職としてきた看護師という職業人生と私という人間の人生の残りが見えてきた今、そのことと向きあうときが来たのだと、良くも悪くも過ぎてきた日々を総括するときが来たのだと思った。
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