嫌いをみとめる

文字数 562文字

 日常において、たいていの悩みは人間関係にある。
 何故あの人は怒るんだろう、傷つけようとするのだろう、など他人の言動に理解できないことに起因するのだと思っている。
 どうしても嫌いなあのチンパンジー。あいつとも、異国の地で唯一の日本人どうしとして出会えたら好きになれたのだろうかと思う。もっといえば、宇宙船でたった二人生き残ったなら、人間愛が芽生えただろうか、とも思う。
 そして冷静になって現実を考える。異国の地で出会うことも、宇宙に行くこともない。何故ならもう出会っていて、もう嫌いだから。
 嫌いな人を嫌いじゃないと思い込むことは難しいのだろうか。食べ物で例えてみようと思うが、嫌いな食べ物がないので思いつかない。
 子供の頃に紫蘇が苦手で、罰ゲームを土下座して回避したことを思い出してみよう。どうしたって無理だから土下座した紫蘇ジュース。瞬時に思い込むことは無理だ。でも今は紫蘇が大好きだ。ベランダで栽培だってしてしまうくらい。
 あいつのことも、時間がたてば好きになれるのだろうか?
 いや、でも紫蘇は私を傷つけたことがない。勝手に私が無理だと思い込んでいただけだった。あいつは私を傷つけたので、思い込みで嫌いなわけではないのだ。
 認めよう。全面的にあいつが嫌いだってことを。嫌いな人がいても生きていかなければいけないことを。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み