第1話
文字数 2,962文字
世界のIoT化が進み、進化してAIoTへと進化していた。
また同時にインターネットにも革命がおこり、ワールドネットと言うものが一人の天才技師によって構築された。
世界は平等に保たれ、人としての労力は殆どないものになっていた。一部の人間の中でエンジニアのみが労力として存在しているくらいだった。
食料の供給も植物が主力とされ、農地も地下の生産場で植物の育成から加工まで行われ、地球で抱えていた食糧問題も終止符を告げていた。
移動手段もほぼタクシーなんて言われている空を飛ぶ乗り物に変わっている。
そう……ほぼ全てが機械に支配された地球となっていた。
学術もオンデマンド化され、人間との関わり合いが希薄になっていた。そのため莫大にあった人口も人類は繁殖を忘れたかのように、どんどんと減っていった。
この状況を21世紀初頭の頃には考えられただろうか?
いや……ご先祖様たちはそんな状況になってるなんで思わないだろう。
旧世代での機械は人の道具として使われていたと聞く。
例えば洗濯にしても今ではロボットが行うのが当たり前だが、旧世代では洗剤を入れて回す道具でしかなかった。そんなところに労力を使うなんて、今じゃ本当に考えられない。
部屋の掃除だって、掃除機なんてものを使っていたらしい。今では床も自動的にきれいになっているのが当たり前だ。
科学の進歩は旧世代から見れば魔法に見える。なんて言葉があった。
俺もそう思う。昔には道路と言うものがあって車と言うものが走ってたなんて聞く。さらにその前では馬に車を付けて走らせていたなんても、学校の授業で聞いた。
馬車の世代から見ると、高速で馬無しで走る車なんて魔法だろう。車の世代から見れば道路がなくなり空を飛ぶ乗り物なんて夢物語だろう。
科学の進歩と言うものはそういうものだ。
しかし……。
そのワールドネットの構築を行った一人の天才は、最後のプログラムを載せていた。
彼の死後1カ月は何もなく平和な時だった。彼の死に功績をたたえてたりもしていた。
だが……今は違う。
その後、異変が起き始める。
最初の被害は空の乗り物。AIoTによって自動制御され安全神話を築いていた乗り物が墜落したのだ。
当時のエンジニアたちは原因を調査し始めるも手がかりを得ることが出来なかった。
そうこうしているうちにも墜落事故はどんどん増えていき、半年で3割の墜落、完全に乗り物としてはマヒしてしまった。
当時のエンジニア達はこの事件だけでも相当慌てたと聞く。
ただ、乗り物がなくなっただけで、移動手段や輸送手段がすべてなくなったわけでは無かったので、この時点では本格的な大打撃の序章にしか過ぎなかった。
次に起きたのは家電製品などの爆発事故。奇しくも墜落事故の余波が終局する間際であった。
この事態はかなり深刻だったようだ。始まってからたったの半年で地球上の人口の3割を削った。
この騒ぎがあった時もエンジニアたちは答えがわからなかったそうだ。
そして……最後に食料。
自動生産されていた食糧に有害物質が含まれるようになったのだった。
もちろんその食料の犠牲になったものも数多くいる。
でも……一番の打撃は貯蓄食料の奪い合いであった。
人が人を殺す世の中……そんな混沌に苛まれていった。
そして今。
エンジニアたちの努力によって、天才が残した「ウイルス」であることを特定した。
実際にはその発見は遅すぎた。
暴動の終局ぐらいにやっと食料調達部分のみを復旧させることが出来たぐらいであったので、減っていた地球の人口は「天才」の死後から数えて1割を切っていた。
食料の供給も不安定ながら回復はしたものの、まだ「天才」の残した「ウイルス」の猛威は収まってはいなかった。
エンジニアたちは最後の砦となった食料を確保するための対策「ワクチン」を作り続けていた。
それは機械と人間との戦争のような装いだった。一度エンジニアが対抗をとっても、AIがそれを回避してしまうプログラムを自動生成してしまう。
そう……最後の砦を守るのに必死で、ワールドネット根幹に居るであれろう「本体」には触れれるものが居なかったのだ。
そして俺はそのエンジニアの一人だった。
ただ……俺は最後の砦を任されるほど腕は認められていなかった。
俺自身の仕事はほぼ窓際にされているような感じだった。
ふいに……時間を持て余していた俺は、ワールドネットに挑戦するようになっていた。
「ワクチン」を作るのは苦手。でも鍵を開けるのが得意だった俺。
解除してはAIに対策・封印される。そんな毎日を送っていた。
しかし人間と言うものも慣れてくるものだ。俺が封印を解くスピードも日に日に上がっていっていたのだ。
鍵のロジックは巧妙で慣れた俺でもうなるようなものばかりだった。
こうすればああなり、ああすればこうなり……。
まるで芸術作品を紐解いている……そんな感覚になっていた。
やがて……いつの日かワールドネットの根幹までたどり着いていた。
人間は不便な生き物だ。睡眠時間をしっかりとらないと動けなくなってしまう。
根幹にたどり着いたとしてもその日に開けた穴は翌日には閉じられてしまう。そしてまたこじ開ける作業に俺は没頭していたのだ。
根幹まで触れる毎日。そう過ごしていたある日。穴の修復が明らかに鈍り始めていたことに気が付いた。
俺がこじ開け過ぎた成果なのだろうか?
その数日後……ついに俺は根幹にたどり着き、最後と思われる鍵に触れることが出来た。
そこには今まで見たことの無いような鍵が施されていた。
今までの芸術作品とは違い、これは明らかにAIでは無く人が作った最後の砦に見えた。
俺は無我夢中でその鍵を解きほぐしていた。もうエンジニアの俺から見ると芸術作品の域に入っている……そんな感覚を受けた。
やがて……最後の鍵を外すためのプログラムが完成し、おそらくは最後のエンターキーの操作だろう。俺は打ち震えながらキーを押した。
根幹の最中心部……そこにあったのは、一つのメッセージだった。
あの「天才」の……。
『これを見つけた人間はきっと私を超える人間だ。
なぜ私がこんなことをしたかと言うと人類の怠惰だ。
私の作ってしまった世界……ワールドネットのせいで人類は堕落してしまった。
許せなかった。ただ私は平和と繁栄を望んだだけだったのに……。
確かに平和は訪れた。
しかし……そのせいで人類は繁栄を拒み堕落した。
だから私の作った世界を自らの手で破壊したかったのだ。
機械の恩恵を受けすぎた人類の末路……それは見たくなかったのだ。
このメッセージを見てくれた人間に礼をする。
あなたは私が求めていた人間だ。待ち望んでいた。
これをもって私の放ったプログラムは解除する。
見つけてくれたあなたに感謝する。』
実感は無い。
これですべてのウイルスは解除された。
そして……今後の人間たちはこれをどのような教訓にするのだろうか。
はたして「天才」の望んだ未来になるのだろうか?
また同時にインターネットにも革命がおこり、ワールドネットと言うものが一人の天才技師によって構築された。
世界は平等に保たれ、人としての労力は殆どないものになっていた。一部の人間の中でエンジニアのみが労力として存在しているくらいだった。
食料の供給も植物が主力とされ、農地も地下の生産場で植物の育成から加工まで行われ、地球で抱えていた食糧問題も終止符を告げていた。
移動手段もほぼタクシーなんて言われている空を飛ぶ乗り物に変わっている。
そう……ほぼ全てが機械に支配された地球となっていた。
学術もオンデマンド化され、人間との関わり合いが希薄になっていた。そのため莫大にあった人口も人類は繁殖を忘れたかのように、どんどんと減っていった。
この状況を21世紀初頭の頃には考えられただろうか?
いや……ご先祖様たちはそんな状況になってるなんで思わないだろう。
旧世代での機械は人の道具として使われていたと聞く。
例えば洗濯にしても今ではロボットが行うのが当たり前だが、旧世代では洗剤を入れて回す道具でしかなかった。そんなところに労力を使うなんて、今じゃ本当に考えられない。
部屋の掃除だって、掃除機なんてものを使っていたらしい。今では床も自動的にきれいになっているのが当たり前だ。
科学の進歩は旧世代から見れば魔法に見える。なんて言葉があった。
俺もそう思う。昔には道路と言うものがあって車と言うものが走ってたなんて聞く。さらにその前では馬に車を付けて走らせていたなんても、学校の授業で聞いた。
馬車の世代から見ると、高速で馬無しで走る車なんて魔法だろう。車の世代から見れば道路がなくなり空を飛ぶ乗り物なんて夢物語だろう。
科学の進歩と言うものはそういうものだ。
しかし……。
そのワールドネットの構築を行った一人の天才は、最後のプログラムを載せていた。
彼の死後1カ月は何もなく平和な時だった。彼の死に功績をたたえてたりもしていた。
だが……今は違う。
その後、異変が起き始める。
最初の被害は空の乗り物。AIoTによって自動制御され安全神話を築いていた乗り物が墜落したのだ。
当時のエンジニアたちは原因を調査し始めるも手がかりを得ることが出来なかった。
そうこうしているうちにも墜落事故はどんどん増えていき、半年で3割の墜落、完全に乗り物としてはマヒしてしまった。
当時のエンジニア達はこの事件だけでも相当慌てたと聞く。
ただ、乗り物がなくなっただけで、移動手段や輸送手段がすべてなくなったわけでは無かったので、この時点では本格的な大打撃の序章にしか過ぎなかった。
次に起きたのは家電製品などの爆発事故。奇しくも墜落事故の余波が終局する間際であった。
この事態はかなり深刻だったようだ。始まってからたったの半年で地球上の人口の3割を削った。
この騒ぎがあった時もエンジニアたちは答えがわからなかったそうだ。
そして……最後に食料。
自動生産されていた食糧に有害物質が含まれるようになったのだった。
もちろんその食料の犠牲になったものも数多くいる。
でも……一番の打撃は貯蓄食料の奪い合いであった。
人が人を殺す世の中……そんな混沌に苛まれていった。
そして今。
エンジニアたちの努力によって、天才が残した「ウイルス」であることを特定した。
実際にはその発見は遅すぎた。
暴動の終局ぐらいにやっと食料調達部分のみを復旧させることが出来たぐらいであったので、減っていた地球の人口は「天才」の死後から数えて1割を切っていた。
食料の供給も不安定ながら回復はしたものの、まだ「天才」の残した「ウイルス」の猛威は収まってはいなかった。
エンジニアたちは最後の砦となった食料を確保するための対策「ワクチン」を作り続けていた。
それは機械と人間との戦争のような装いだった。一度エンジニアが対抗をとっても、AIがそれを回避してしまうプログラムを自動生成してしまう。
そう……最後の砦を守るのに必死で、ワールドネット根幹に居るであれろう「本体」には触れれるものが居なかったのだ。
そして俺はそのエンジニアの一人だった。
ただ……俺は最後の砦を任されるほど腕は認められていなかった。
俺自身の仕事はほぼ窓際にされているような感じだった。
ふいに……時間を持て余していた俺は、ワールドネットに挑戦するようになっていた。
「ワクチン」を作るのは苦手。でも鍵を開けるのが得意だった俺。
解除してはAIに対策・封印される。そんな毎日を送っていた。
しかし人間と言うものも慣れてくるものだ。俺が封印を解くスピードも日に日に上がっていっていたのだ。
鍵のロジックは巧妙で慣れた俺でもうなるようなものばかりだった。
こうすればああなり、ああすればこうなり……。
まるで芸術作品を紐解いている……そんな感覚になっていた。
やがて……いつの日かワールドネットの根幹までたどり着いていた。
人間は不便な生き物だ。睡眠時間をしっかりとらないと動けなくなってしまう。
根幹にたどり着いたとしてもその日に開けた穴は翌日には閉じられてしまう。そしてまたこじ開ける作業に俺は没頭していたのだ。
根幹まで触れる毎日。そう過ごしていたある日。穴の修復が明らかに鈍り始めていたことに気が付いた。
俺がこじ開け過ぎた成果なのだろうか?
その数日後……ついに俺は根幹にたどり着き、最後と思われる鍵に触れることが出来た。
そこには今まで見たことの無いような鍵が施されていた。
今までの芸術作品とは違い、これは明らかにAIでは無く人が作った最後の砦に見えた。
俺は無我夢中でその鍵を解きほぐしていた。もうエンジニアの俺から見ると芸術作品の域に入っている……そんな感覚を受けた。
やがて……最後の鍵を外すためのプログラムが完成し、おそらくは最後のエンターキーの操作だろう。俺は打ち震えながらキーを押した。
根幹の最中心部……そこにあったのは、一つのメッセージだった。
あの「天才」の……。
『これを見つけた人間はきっと私を超える人間だ。
なぜ私がこんなことをしたかと言うと人類の怠惰だ。
私の作ってしまった世界……ワールドネットのせいで人類は堕落してしまった。
許せなかった。ただ私は平和と繁栄を望んだだけだったのに……。
確かに平和は訪れた。
しかし……そのせいで人類は繁栄を拒み堕落した。
だから私の作った世界を自らの手で破壊したかったのだ。
機械の恩恵を受けすぎた人類の末路……それは見たくなかったのだ。
このメッセージを見てくれた人間に礼をする。
あなたは私が求めていた人間だ。待ち望んでいた。
これをもって私の放ったプログラムは解除する。
見つけてくれたあなたに感謝する。』
実感は無い。
これですべてのウイルスは解除された。
そして……今後の人間たちはこれをどのような教訓にするのだろうか。
はたして「天才」の望んだ未来になるのだろうか?