前夜祭

文字数 1,096文字

時計の針は、24時50分を指していた。
こんなはずじゃなかったのに!
日付が変わる前に眠りにつく予定だった私の計画にズレが生じ始めたのは、お風呂後のことである。

1時間ほど半身浴をしてお風呂から上がった私は、急いで顔にパックを貼った。
髪を乾かし、保湿クリームを全身に塗りたくる。
パックを剥がして、化粧水・美容液・乳液を顔につけた。

ルーティーンを終え、時刻は21時。
よし、後は明日の服を選んで眠るだけ。
安堵してリビングに戻ると、携帯の画面が光っていた。
「シンジがインスタライブしてる!!」
友達の由紀から、その一言だけが送られてきていた。
嘘でしょ。明日も朝早いんだから、身体のためにも早く寝てよ…。
そんな私の想いなどつゆ知らず、画面越しのシンジはお酒を片手に笑っていた。

インスタライブが終わったのは、23時30分。
やっと終わった…。
インスタを閉じると、妹の愛莉からメッセージが送られてきていた。
「シンジのインスタライブ最後まで見てたんでしょ?明日直接会えるんだからいいじゃん笑」
妹よ、わかってないなあ。

シンジが私と同じ土地にいる。
それがこのインスタライブで一足早く証明されるというのに、見ないなんて選択肢はないでしょ。
それにホテルからインスタライブができるのは、ライブ前かライブ後だけ。
ライブ前はファンに早く会いたい、楽しみっていうシンジが見られるし、ライブ後は楽しかった!今日はありがとうって言ってくれるシンジが見られる。
そもそも、今日のシンジと明日のシンジは別人なのよ。
…そんな想いを妹に熱弁したところでシンジが私の元にやってくるわけでもないので、そっと受け流した。

ああ!やばい!もう24時だ!
先ほどのインスタライブでスクショしたシンジを厳選していたら予定時刻になっていた。
まだ、参戦服選んでないのに!
携帯をソファに放り投げ、クローゼットに直行した。

シンジのメンバーカラーは赤だから、赤いものをコーディネートに取り入れるのが私の鉄則。
去年は赤いバンダナにしたんだよな…。
毎年同じコーディネートだと覚えてもらいやすいかもしれない。
でも、この服しか持ってないの?って思われるのも嫌だし…。
ああ、まずい。服選びにいつも1時間はかかるから急がなきゃ。

服選びの時間を10分だけ巻くことができた今の時刻は、24時50分。
布団に入り、目を瞑る。
明日、シンジはどんな髪型かなあ。さっきの髪色、私が一番好きな茶髪だったなあ。
新曲も新しい衣装も楽しみだなあ。
グッズ、売り切れていませんように。朝イチで並ぶけど、こればっかりは運次第。
昨日のうちにネイル塗っておいてよかった〜。

結局、私が眠りについた時刻は言うまでもない。
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