第1話
文字数 2,000文字
「お兄ちゃん、ここどこ〜?」
森に虫取りに来ていた兄妹のワタルとユカは帰る道中で迷子になってしまった。
兄のワタルは顔を真っ青にしながら言う。
「お、俺も分かんないよ……どうしよう、どうしよう……」
兄の焦る様子を見たユカは余計に不安になって泣いてしまった。
「わーん! 虫取りなんかに来るんじゃなかったー!」
「そ、そんなこと言うなよ〜……」
泣きじゃくるユカを傍にワタルは周囲を見回した。
すると、生茂る草木の向こう側にトンネルがあるのを見つけた。
「ユカ、向こうにトンネルがある! 出られるよ!」
しくしくと俯いていたユカは顔を上げ、ワタルが指差す方向にトンネルがあるのを確認するとパアアと笑顔になった。
「トンネルを抜けると町に戻れるはず! 行くよユカ!」
「うんっ!」
草木を掻き分けながら二人はトンネルに向かった。
しかし、トンネルの前に来て二人は首を傾げる。
「ディベー……トんねる?」
大きなトンネルの入口の上には【ディベートんねる】と書かれてあった。
ワタルとユカは謎の文字に不安を感じながらもトンネルの中に入った。
すると、フードを被った雰囲気の似た二人の男がワタルとユカを睨みつけながらコソコソと何かを話している。
「あの人たち何だろ……怖い」
「(シーッ。危ない人たちもしれないから無視してトンネルから出よう)」
異様な雰囲気を持つフードを被った二人を気にしつつも、ワタルはユカの手を引っ張ってトンネルの出口に向かった。
バイィーン!!
「あれ?」
「どうしたの、お兄ちゃん」
バイィーン!! バイィーン!!
「あれれ? 外に出れない!」
ワタルの後ろでユカが不安げにしている。
トンネルの出口には目に見えない何か透明なバリアが張られているようで、外に出られないようになっていた。
ワタルは再び顔を真っ青にして混乱している。
ユカもそんなワタルを見て涙を浮かべ始めた。
「そう簡単にこのトンネルからは出れねーよ、バカ」
「バカっぽいガキ共が来てくれてラッキーだぜ」
フード男の二人がワタルとユカにそう声を投げかける。
ワタルはムッとした表情で言い返した。
「何ですか、あなたたちは! 人のことをバカバカって……失礼ですよ!」
すると、フード男の二人は立ち上がってワタルとユカのもとに近づいてきた。
「あ? やんのかコラ」
「調子のんなよガキが」
ワタルとユカは身体を震わせながら後退りする。
と、その時。
「ストーーーップ!」
トンネルの入口でポニーテールの白いシャツに蝶ネクタイを付けた女性が仁王立ちしながらそう叫んだ。
「喧嘩禁止! 暴力反対! 清く正しくディベート大会パンパカパーン♪」
シィーーン……
「はいスベった! まあいいや! とにかく喧嘩はダメ、するならディベートっ!」
女性がそう言うとフード男の二人は「チッ」と舌打ちをした。
ワタルが女性に聞く。
「あの、トンネルから出られないんですけど……どうすれば出る事ができますか?」
女性はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに張り切った口調で話し始めた。
「はい! ここはディベートんねる! このトンネルから出られるのは私が出す議題でディベートして勝利を手にしたチームだけです!」
「ぎだい? でぃべーと?」
ユカが指を咥えながら首を傾げていると、フード男の一人が苛ついた表情で言った。
「姉さん、こいつらに難しい単語を並べても理解なんて出来ねーよ。さっさと議題を提示してくれ」
「へい! じゃあ今回の議題は『宇宙人はいるか?』で! いる派は右に、いない派は左に分かれてください!」
ワタルは状況に混乱しつつもユカに「いるよね?」と言い、ユカも「うんうん」と頷いた。
ワタルとユカは右に並ぶ。
フード男の二人は「いる訳ねーだろ」と左に並んだ。
「ちゃんと並べましたね! では、討議開始ー!」
女性がスタートの合図を切ると、フード男の一人が早速と言葉を放った。
「宇宙人はいない! 何故なら誰も見た事が無いからだ!」
片方のフード男も「そうだそうだー!」と後ろで叫んでいる。
女性も「確かに見た事が無い者の存在を認めるのは無理があるわね」と頷いていた。
先手をとられる。
「で、でも、宇宙は凄く広いからきっといるよっ!」
ワタルが焦ってそう言う。
「全く論理的じゃねーな。広いからいるって滅茶苦茶だぜ?」
「そうだそうだー!」
さっきから「そうだそうだ」としか言っていない方のフード男にワタルは苛つくが、それでも女性は「そうね、広いから宇宙人が存在するってのは滅茶苦茶」とフード男側の意見を尊重する。
完全に押されているワタルとユカ。
しかし、ユカの次の一言に全員が驚いた。
「えーっと、宇宙にある地球に住んでるから……あたしたちは宇宙人っ!」
――そう、誰もこの発言に異論は唱えられない。
地球は宇宙に存在する。
つまり我々は宇宙人。
「勝者、ワタル&ユカチーム〜〜!」
トンネルの出口に張ってあったバリアがモワァンと消え、ワタルとユカは走ってトンネルから抜け出した。
森に虫取りに来ていた兄妹のワタルとユカは帰る道中で迷子になってしまった。
兄のワタルは顔を真っ青にしながら言う。
「お、俺も分かんないよ……どうしよう、どうしよう……」
兄の焦る様子を見たユカは余計に不安になって泣いてしまった。
「わーん! 虫取りなんかに来るんじゃなかったー!」
「そ、そんなこと言うなよ〜……」
泣きじゃくるユカを傍にワタルは周囲を見回した。
すると、生茂る草木の向こう側にトンネルがあるのを見つけた。
「ユカ、向こうにトンネルがある! 出られるよ!」
しくしくと俯いていたユカは顔を上げ、ワタルが指差す方向にトンネルがあるのを確認するとパアアと笑顔になった。
「トンネルを抜けると町に戻れるはず! 行くよユカ!」
「うんっ!」
草木を掻き分けながら二人はトンネルに向かった。
しかし、トンネルの前に来て二人は首を傾げる。
「ディベー……トんねる?」
大きなトンネルの入口の上には【ディベートんねる】と書かれてあった。
ワタルとユカは謎の文字に不安を感じながらもトンネルの中に入った。
すると、フードを被った雰囲気の似た二人の男がワタルとユカを睨みつけながらコソコソと何かを話している。
「あの人たち何だろ……怖い」
「(シーッ。危ない人たちもしれないから無視してトンネルから出よう)」
異様な雰囲気を持つフードを被った二人を気にしつつも、ワタルはユカの手を引っ張ってトンネルの出口に向かった。
バイィーン!!
「あれ?」
「どうしたの、お兄ちゃん」
バイィーン!! バイィーン!!
「あれれ? 外に出れない!」
ワタルの後ろでユカが不安げにしている。
トンネルの出口には目に見えない何か透明なバリアが張られているようで、外に出られないようになっていた。
ワタルは再び顔を真っ青にして混乱している。
ユカもそんなワタルを見て涙を浮かべ始めた。
「そう簡単にこのトンネルからは出れねーよ、バカ」
「バカっぽいガキ共が来てくれてラッキーだぜ」
フード男の二人がワタルとユカにそう声を投げかける。
ワタルはムッとした表情で言い返した。
「何ですか、あなたたちは! 人のことをバカバカって……失礼ですよ!」
すると、フード男の二人は立ち上がってワタルとユカのもとに近づいてきた。
「あ? やんのかコラ」
「調子のんなよガキが」
ワタルとユカは身体を震わせながら後退りする。
と、その時。
「ストーーーップ!」
トンネルの入口でポニーテールの白いシャツに蝶ネクタイを付けた女性が仁王立ちしながらそう叫んだ。
「喧嘩禁止! 暴力反対! 清く正しくディベート大会パンパカパーン♪」
シィーーン……
「はいスベった! まあいいや! とにかく喧嘩はダメ、するならディベートっ!」
女性がそう言うとフード男の二人は「チッ」と舌打ちをした。
ワタルが女性に聞く。
「あの、トンネルから出られないんですけど……どうすれば出る事ができますか?」
女性はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに張り切った口調で話し始めた。
「はい! ここはディベートんねる! このトンネルから出られるのは私が出す議題でディベートして勝利を手にしたチームだけです!」
「ぎだい? でぃべーと?」
ユカが指を咥えながら首を傾げていると、フード男の一人が苛ついた表情で言った。
「姉さん、こいつらに難しい単語を並べても理解なんて出来ねーよ。さっさと議題を提示してくれ」
「へい! じゃあ今回の議題は『宇宙人はいるか?』で! いる派は右に、いない派は左に分かれてください!」
ワタルは状況に混乱しつつもユカに「いるよね?」と言い、ユカも「うんうん」と頷いた。
ワタルとユカは右に並ぶ。
フード男の二人は「いる訳ねーだろ」と左に並んだ。
「ちゃんと並べましたね! では、討議開始ー!」
女性がスタートの合図を切ると、フード男の一人が早速と言葉を放った。
「宇宙人はいない! 何故なら誰も見た事が無いからだ!」
片方のフード男も「そうだそうだー!」と後ろで叫んでいる。
女性も「確かに見た事が無い者の存在を認めるのは無理があるわね」と頷いていた。
先手をとられる。
「で、でも、宇宙は凄く広いからきっといるよっ!」
ワタルが焦ってそう言う。
「全く論理的じゃねーな。広いからいるって滅茶苦茶だぜ?」
「そうだそうだー!」
さっきから「そうだそうだ」としか言っていない方のフード男にワタルは苛つくが、それでも女性は「そうね、広いから宇宙人が存在するってのは滅茶苦茶」とフード男側の意見を尊重する。
完全に押されているワタルとユカ。
しかし、ユカの次の一言に全員が驚いた。
「えーっと、宇宙にある地球に住んでるから……あたしたちは宇宙人っ!」
――そう、誰もこの発言に異論は唱えられない。
地球は宇宙に存在する。
つまり我々は宇宙人。
「勝者、ワタル&ユカチーム〜〜!」
トンネルの出口に張ってあったバリアがモワァンと消え、ワタルとユカは走ってトンネルから抜け出した。