プロット

文字数 1,239文字

起) 十三歳の富永梅太郎は、山姥一族の長男坊。山奥にひっそりとたたずむ掘っ建て小屋で、山姥の祖母と父と三人で暮らしていた。けれど梅太郎の父は、土地の所有権を巡って近隣の天狗一族ともめていた。梅太郎の将来を心配する祖母の松子は、「今の時代、山姥にも教養が必要だ」と言い、梅太郎を学校に通わせるべきだと決断。梅太郎は人間に紛れる形で、山を下った先にある、中学校に通いはじめる。山から数キロの通学路を、山姥の身体能力を生かして走りぬける梅太郎。

承) 人間の常識がさっぱりわからない梅太郎は、クラスでもひときわ浮いていた。しかし梅太郎は持ち前の行動力と負けず嫌いな性格で、授業に遅れをとらないよう猛勉強。いじめっ子に言いがかりをつけられたり、隣の席の女子生徒に告白されたり、頭の固い生徒会長に目をつけられたりと、ときにトラブルになりつつも色々な人間がいることを学ぶ。最初はぶっちぎりのビリだった成績も徐々に上がっていき、いじめっ子たちとも和解した梅太郎。少しずつだがクラスになじんでいく。しかし一学期の暮れに、生徒が次々と消える「連続神隠し事件」が巻き起こる。

転) 立て続けに生徒が行方知れずとなり、梅太郎は同級生たちと「神隠し捜索隊」を結成。聞き取り調査をしていくなか、梅太郎たちは気になる情報を得る。それは「背中に翼を生やした山伏姿の大男が、子どもに声をかけていた」という目撃情報だった。首をひねる捜索隊だが、梅太郎には心当たりがあった。梅太郎の近所に住む、天狗の特徴とよく似ている。さらに偶然にも、梅太郎の父が土地の所有権を巡り、天狗ともめている最中。梅太郎は捜索隊を抜けだして、山奥に住む天狗一族のもとを訪ねる。天狗一族は神隠しをして、子どもたちを次々にさらっていた。そして捕まえた子どもたちを天狗の里に閉じ込めて、働かせていたのだ。天狗の親分を説得する梅太郎。親分は、知恵比べで勝てばさらった子たちを帰してやってもいい、と言う。だが梅太郎が負けたときは、土地の所有権を全て渡せと要求してきた。梅太郎はその要求を呑み、天狗の知恵比べに挑む。一つ二つと問題を解くものの、途中で詰まってしまう梅太郎。そこへ捜索隊のメンバーが助けに現われる。彼らは山に入る梅太郎を見かけ、こっそり尾行していた。同級生たちの助けもあり、天狗の裏をかく形で知恵比べに勝つ梅太郎。しかし天狗が逆上して、梅太郎に襲いかかる。

結) 梅太郎は山姥としての本気を出して、天狗を迎えうつ。天狗の術を力技ではねとばし、強引に取り押える。山姥としての恐ろしさを知らしめた梅太郎は、さらわれた生徒全員を無傷で救出する。しかし同級生たちは、梅太郎の人間離れした力に困惑していた。梅太郎は悩んだ末、自分が山姥の一族であることを打ち明ける。同級生の面々は最初こそおどろいていたものの「その力のおかげで助けられた」と、梅太郎を仲間として受け入れる。そうして一学期の暮れ、梅太郎は父と祖母に見送られて、いつものように学校に向かった。
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