第1話

文字数 1,298文字

離乳食とはご存知、母乳やミルクを飲んでいた赤ちゃんがお粥状のものから徐々に大人のご飯を食べられるようステップアップする食事である。
だいたい歯が生え始める生後6ヶ月頃から始めるのだが、私はまさにその6ヶ月から1歳8ヶ月までの間アメリカで育った。
両親は日本人で英語が達者なわけではなく、母にとって私は第一子なので、離乳食のこともよくわからなかったという。
言葉が通じない土地での初めての子育ては大変だったろうと思う。
今私が住んでいる市町村では先着で離乳食講座を受けられたり、育児雑誌を読めば離乳食のレシピが付録でついていたりするが、母の時代はそういったものはなく、具体的にどういうものを食べさせたらいいかわからなかったそうだ。
アメリカの日本食店に豆腐も売られていたが、これは一体いつ作ったの?というような代物で、怖くて食べさせられない。
アメリカによくある大容量の牛乳を飲ませた時には顔中に湿疹が出て、以来怖くてアメリカの牛乳は飲ませられない。
週末はあちこちに旅行するので外食が多く、外出先ではフライドポテトを食べさせ、父は子どもが求めるままに炭酸飲料のスプライトを飲ませる…。
そのせいかはわからないが、私はじゃがいもが大好きである。フライドポテトはそんなに食べないが、粉ふきいもやじゃがバターなんかが好きで、じゃがいもの味そのものが好きなのだ。
反対に梅干し、海苔、納豆といった日本食が好きではなくて、妹たちが海苔の佃煮なんかをご飯といっしょにおいしそうに食べるのが信じられなかった。
今ではどれも食べられるが、子どもの頃は好き嫌いが多く、昨今は高級食パンブームが起きているようだが、それよりずっと前からパンが大好きで、米が好きではなかった。
大きくなって母から離乳食の話を聞いて、私はだからこうなのか、と思った。
生まれ持った好みかもしれないが、兄弟の中でこんなにじゃがいもが好きなのは私だけなのだ。
自分が子どもにパンと牛乳を煮たパン粥を作って味見をした時は、パン粥ってこんなにおいしいんだ!と感動したが、母によるとアメリカでパン粥をよく食べていたらしい。
だから私は、離乳食というのは子どもの食の好みに影響するような、すごく重要なものではないかと思っている。
別にたまたまかもしれない、他の影響もあるかもしれない、しかし母からそういった話を聞いていたので、私は自分の子どもの離乳食には力を入れた。
離乳食でいろいろな物を食べさせておけば、子どもが好き嫌いなくいろいろな物を食べられるかもしれないと思った。
好き嫌いは少ないほうがいい。学校の給食が苦痛でないし、よその家でごちそうになって残したら申し訳ないし、できればおかわりをして喜ばせたい。何より、ご飯をおいしく食べられればご飯の時間が楽しくなる。
子どもの好き嫌いがどの程度かは何年か経たないとわからないが、離乳食に真摯に取り組んでだめだったなら諦めもつくというもの。
今のところ、離乳食期にはほぼなんでも食べていたのが、イヤイヤ期に差し掛かったせいか青物を始め食べない物が増えて悪戦苦闘の日々を送っているが、いつかまた食べられるようになってくれればと願っている。
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