架空葬儀

文字数 277文字

三十八度の真夏正午
冷房の効いた部屋で
君は生気(いき)をやめた

暗証番号を心に秘めて
仄めかしさえしないから
わたしなんかが一番目

平米十六の点を打ち
やっと一輪を咲かせ
君のアイコンめがけて
ひと思いにほうり投げた

骨や管のからまりから
漸く逃げ(おお)せたのだね
苦しくなかったろうか
思い残しはないだろうか

君はいつも藻掻いていた
わめき甘言をねだれど
理想郷はどこにもない

そちらはよい心地でしょう
ビープでポップアップで
だれかの手元に(しら)せてくれ

なが話に欠伸して
力のかぎり遊んで
寝床に着いたら
お別れにしよう

子ども部屋の夢のつづき
君にはもう何も要らない
未知よふたたびはじまれ
永くほがらかにたゆたえ
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