第1話

文字数 1,574文字

 ななは、えをかくことが、だいすきなおんなのこ。
 きょうは、ななのたんじょうび。
 おかあさんが、すてきなピンクいろのワンピースを、かってくれました。
 ななは、うれしくてうれしくてしかたありません。
「さっそく、きてみよう」
 ななが、かってもらったばかりのワンピースをきた、そのとき。
「あれ?」
 ワンピースのいろが、まっしろに、かわってしまいました。
 ななは、がっかり。さっきまでのたのしいきぶんは、どこかへいってしまいました。
 これはきっと、いろをぬすむ、いろどろぼうのしわざです。
 まえにおかあさんから、いろどろぼうのおはなしを、きいたことがあったのです。

 ななは、そとにとびだしました。
 すると、しくしくとないている、おとこのこがいました。
「どうしたの?」となながたずねると、おとこのこは、「ぼくのあおいズボン、まっしろになっちゃったんだ」と、いいます。
 おとこのこのズボンは、たしかにまっしろです。
 まわりをみると、ピンクいろだったさくらのはなも、あかいろだったゆうびんポストも、まっしろ。
 どうやらみんな、いろをぬすまれてしまったようです。

 ななは、いえのかべを、きいろいぺんきでぬっているおじさんに、であいました。
「おじさん。いろどろぼうを、みなかった?」
「わからないねぇ。いろどろぼうは、いろあざやかなところに、あらわれるそうだけど……」
 そのとき。
 それまできいろくぬられていたかべが、まっしろにかわってしまいました。
「いろどろぼうだわ!」
 ななは、いえのやねのうえに、ちいさなおんなのこがいるのを、みつけました。
 ようせいのようなそのおんなのこは、にじいろのワンピースをきて、ふふふ、とわらっています。
「みんなからぬすんだいろを、かえして!」
 ななは、いいました。
 でも、おんなのこは、くびをよこにふります。
「いやよ。わたし、きにいったいろは、ぜんぶほしいの。それで、このワンピースを、もっともっと、いろあざやかにするの」
 おんなのこは、あっというまに、にげてしまいました。
「いろをひとりじめするなんて、ゆるせない!」
 ななは、いろどろぼうをつかまえて、ぬすまれたいろをとりかえしたい、とおもいました。

 ななは、どうしたらいいのか、かんがえました。
「そうだ!おおきな、にじのえをかこう!」
 いろどろぼうは、いろあざやかなものがあるところに、あらわれます。
 おおきなにじのえをかけば、そこに、いろどろぼうがやってくるでしょう。
 そうして、いろどろぼうをおびきよせて、つかまえることにしました。
「それなら、このいえのかべいっぱいに、えがくといいよ。このかべは、いろどろぼうせんようにしよう」と、おじさんがいいました。
「ありがとう!おじさん」

 ななは、いえのかべに、おおきなにじのえをかきました。
 なないろのぺんきで、ていねいにいろをぬり、とびきりいろあざやかなえの、かんせいです。
 えができあがると、やっぱり、いろどろぼうは、やってきました。
「えいっ!」
 ななは、いろどろぼうをつかまえました。
 いろどろぼうは、もうにげられません。
「みんなからぬすんだいろを、かえして!」
「ごめんなさい。でも、たくさんのいろが、ほしいの」
「このにじのいろなら、あげる。このかべがまっしろになったら、またべつのえをかくから、なんどでもぬすめるわ」
「ほんとう?」
「ええ、ほんとうよ」
 いろどろぼうは、ぬすんだいろを、みんなにかえしにいきました。
「ごめんなさい」と、はんせいしているようすです。
 もとにもどって、みんな、おおよろこび。
 ななのワンピースも、もとのピンクいろに、もどりました。
 それからというもの、いろどろぼうは、みんなからいろをぬすむのをやめました。
 ななのかいたえだけを、ぬすむようになり、いつのまにか、ななとともだちになったのでした。


 
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