1)起承転結を含んだプロット

文字数 1,478文字

起)
赤葉小学校には、部員がたった二名の新聞部がある。副編集長のユウキは「新聞なんて古い、ネット配信にしよう」が口癖の、デジタルが大好きなお調子者。新聞や週刊誌の敏腕記者に憧れて新聞部に入った。一方、編集長のハルタは、出版社の編集に憧れる頭脳明晰な優等生。「そんなの新聞じゃない」と取り合わない。妙に仲がいいものの、小さな喧嘩の絶えない二人に、入部希望者や元々いた六年生まで次々と新聞部を辞めてしまう。そのため、仕方なく五年生の二人で活動していた。人手も足りず、先生の目もあることから、取り上げる記事は「うさぎ小屋に新しい家族誕生」といった皆知っていることばかり。ユウキもハルタも、そんな新聞を書くのに飽き飽きしていた。

承)
そんなある日、学校で「笑う骨格標本事件」が起きる。学校中が幽霊だ都市伝説だと大騒ぎに。スクープを撮りたいというユウキにハルタも巻き込まれる形で、二人は事件を調べる。すると、クラスメートのソウマが、最初はちょっとしたイタズラで装置を作ったものの、あまりにも盛り上がってしまい引っ込みがつかなくなっていたと突き止める。そこでユウキとハルタは、犯人の名前は明かさずに「笑う骨格標本事件」の真相を書いた「匿名新聞」を出す。これを機に、表向きは、ぱっとしない新聞部と匿名新聞部が対立しているように見せかけ、「新聞部が書けない記事」を二人は次々に発表。「踊る女の影事件」や「貰っていくこっくりさん事件」を解決していき、匿名新聞は大評判になる。

転)
二人が六年生になると、新しく五年生のリクト、シュン、メイの三人が入部してきた。ユウキとハルタの絆が深まって喧嘩が少なくなったこともあり、幸か不幸か、一か月経っても三人は新聞部をやめなかった。それどころか、匿名新聞部の正体を暴くという一大スクープを狙いだした! 新聞部と匿名新聞部を両立させながら、何とか隠し通そうといたちごっこを演じるユウキ達。しかし、卒業間際に匿名新聞を作っているのが三人にバレてしまう。これまでの和気藹々とした楽しい空気は一変。後輩三人はユウキ達に自作自演だったのかと怒り、新聞部は分裂状態になってしまう。そのさなか、「音楽室密室事件」が発生する。

結)
ユウキとハルタはすぐに、「スランプから歌えなくなった合唱部の生徒が密室を作った」という真相に辿り着くが、敢えて匿名新聞を出さないでいた。遅れて同じ結論に達したリクト達は、これを新聞部の記事として、匿名新聞より先に出そうと画策する。しかし、顧問の先生は「密室だ事件だなんて馬鹿げている、本当は開いたのに開かなかったと騒いだんじゃないのか」「結局予備のカギでドアは開いたらしいからいいじゃないか」と記事にするのを認めない。その翌日、密室の謎を解いた匿名新聞が貼られた。これを見た犯人の生徒は、自分がやったのだと名乗り出て、思うように歌えなくなってこんなことをしてしまったと合唱部の仲間に伝える。それを聞いた仲間は、口々に「もう一度初心に戻って、音を楽しむ気持ちで歌おう」と励ました。その翌週、合唱部は見事団結し、コンクールで金賞を獲ることができた。この様子を見ていたリクト達は、匿名新聞にしかできないことがあると気付く。和解した後輩三人に対し、ユウキとハルタはこう告げる。「よし、今日からお前たちが匿名新聞部だ」。中学生になった二人は、久しぶりに母校の廊下を歩いていた。「アイツら、俺達の正体を暴けたんだから大したもんだよな」「まあ、大物になるかもしれないな。……ほら!」二人が見上げた先には、新しい「匿名新聞」が貼り出されていた。
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