藁家

文字数 2,410文字

こちらで藁家さんに執筆していただきます。他の方は書き込まないように注意してください。
どしーん、どしーん。
その怪獣に、自我はない。ただただ、主人と――吉野、千恵と並んで歩くだけ。
どしーん、どしーん。
千恵もただの子供だ。だから何も知らない。おかあさんに手元の袋――円錐型のビニール袋を届けることしか考えていない。
どしーん、どしーん。
だから、これは大人の事情。
この近くに「ジェノサイド」を名乗る反政府武装組織のアジトがあることも、踏み潰されたり、警察が来たりしたら困るひとがいるのも、全部、全部、大人の事情。
「悪いね。お嬢ちゃん。
…僕たちは、あまり魔人を殺したくはないんだけど。」
「ジェノサイド」構成員の彼の能力は、ただのテレポート。でも、単純で使いやすい能力ではあるし――なにより、彼は『遙か-A』の能力の為に採用された人材であった。
「…?」
少女が違和感を感じた時には、もう、意識は消えていた。
「…。」
「……。」
「………。」
「てなわけで、やっほー!ナレーター交代だよ!こんにちはちえちゃん、私、遙か-B!」
明るく、明るく声をかける。私は妖精、『遙か-B』!ここは私の世界だし、私の世界に遊びに来た人に楽しんでいってもらいたい。この子も例外じゃない。
「??…?……おねーちゃん、だぁれ…?」
よく、わかってないみたい。でも時間はたっぷりあるからいいわ!私は説明を始める。
「ここは神秘体験体感ツアー!あなたも、いろいろ好きなことがあるでしょう?お菓子とか、ゲームとか、動物でもいいわ。この世界では、あなたは現実世界でそれをやった時より、とっても楽しくなることができるの!」
「…よく、わかんない…。」
「つまり、こういうことよ。『お姉さんと一緒に遊びましょう!』」
後ろでクラッカーの音を演出しながら、私は満面の笑みで手を広げる。
こういうのは派手な方がいい。とくに、子供に対しては。
「…んん…。」
…あれ?おかしいなあ。あんまり乗り気じゃないみたい。今の言葉にだって、表情にだって、普通の百倍ほどの多幸感を感じるようにプログラミングした。これで落ちないはずはないんだけど。
「あ、あのね、お姉ちゃん。」
少女が顔を赤らめて恥ずかしそうにモジモジし出す。おっ、なーんだ、極度の恥ずかしがり屋さんだったのかな?
「私ね、私ね…!すきなこと、ある!」
「おう、おう!お姉さんが相手になるぞー!」
「あの、あのね!」
「うんうん、言ってみなさい!」
「ころしあい!」
次の瞬間、私は地面を見ていた。つーか、死んでた。
……。
「死んだやないのっ!」
「あ、おかえりー。おねえちゃん、よわいんだね。」
私の世界なんだけど、なんか勝手に積み木で遊んでた。それはこの際どうでもいいや。
「いやさ、私がよわいってゆーか、自分強すぎとちゃう?どうなってんのよ。」
「わたしのおかーさんねー、あんさつとか、ぼうりゃくとか、しゅみみたい。」
っべー、ついていけない。そういうことはキャラ説に書けよ。ふざけんなよ。
あと、多分だけどそれ趣味じゃなくて仕事だ。
「えー、わ、私、殺されるのとか、ちょっとやだからなー。普通の、普通の遊びしない?」
私にだって痛覚はある。何回も殺されたらたまったもんじゃない。つーか、次殺されたらもう能力解除するかんな。クーリングオフだバカヤロめ。
「おねーちゃん、あんまつよくないし、おかーさんにプレゼントあるからそろそろかえりたい…。」
「そっかー帰りたいかー。」
もう、この子返しても良いんじゃないかな。
弱い弱い言われるけど、一応私も相当強い。多分、もう1つの並行世界バトルでは私が無双してるはずなんだ。もう私の活躍はそっちに譲っても良いんじゃない?
「おねーちゃん、いきすぎためたはつげんはどくしゃばなれするよ」
「うるせークソガキ。
…ごほん、いいでしょう。ここから出してあげる。本当は廃人とかになるまで待つんだけど、まあいいや。じゃあ、解除するよー。」
「あっ、まって」
この期に及んでまだあんのか。
いま、わたし、みちまよってるから、おうちまであんないしてほしいの。
「私、本体は昏睡状態って書いてあるんだけど。」
「おねぼーさんはだめだよ。おきてきて。」
んー、まいっかー。組織のテロごっこも飽きたし、さっき自分で言ったけど、私強いから、正直1人で組織とか潰せるし。
「いいよ。わかった。いま千恵ちゃんがいるところまで十分くらいかかるけど、ちょっと待っててね。」
「うん!まってるー!」
この子、めちゃくちゃ可愛いし、たまには大団円もいいでしょ。次の就職先、探さないとなー。
あっ自分っすか
「やっほー来たよ、」
千恵は最初の場所から動かず立っていた。遙かを見ると少し顔を困惑させる。
「あっ、わたしわたし。遙かだよ。本体とちょっと顔違うから、びっくりしたかなー。」
「…むむー。しょーこみせて。」
少女は少し意地悪な顔をして言ってみせた。多分、雰囲気から気づいてはいるのだろう。
あ、言い忘れてたけど『シン・ヨウジョ』解除済みっす。じゃあなんで俺がナレーターなんだよー。
「証拠?っつっても何やれば…。」
「あれ、あれ。不思議体験つあー!みたいの」
こいつ、結構性格悪いな…。あれ素面でやれって?

「こ、ここは神秘体験体感ゴニョゴニョ…。」

「こーえーがーちいーさいー!!」
ぴょん、ぴょん、と少女が跳ねる。
「だぁー!ここは神秘体験体感ツアー!あなたも、いろいろ好きなことがあるでしょう!?!?」
やけくそである。
こっちくんな
ごめん、左右を間違えやすいんだ。
「はぁ…。で、家の地図は?
…うん、なるほど、それならすぐ近くよ。行きましょう。」
「つーか、この子の母親やばそうだし会いたくないな…そもそも、おつかいってなんなの?」
「これ!」
少女が持っていた円錐状の袋の中を見せると、そこには赤いカーネーションが一輪。
「おくれたけど、ははのひのプレゼント!!」
おしまい。
え、俺は?
おしまい。
一時間!執筆終わり!

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登場人物紹介

名前:よしの ちえ


性別:幼女




キャラクター設定:3さい。女の子が欲しい!と切望していた吉野さん夫婦の第三子にして長女。人見知りなので、話しかけるとスカートをぎゅっと握りしめて動かなくなるぞ。




特殊能力:『シン・ヨウジョ』


認識阻害及び大規模破壊もしくは変身能力。


右目と左目で見える物が異なるように、彼女を視認した人間はそこに愛らしい幼女と巨大生物を『同位置に』幻視する。100メートルはあろうかという巨大生物と1メートル足らずの幼女、どちらが真なのかは、彼女自身にすら分からない。




相手を倒したい理由:はじめてのおつかいのとちゅうでじゃまだから

名前:遙か‐A
性別:女性
設定:
『カテゴリ;S』と呼ばれる魔人能力を持つ者の一人。
彼女の身柄は魔人絶対主義を掲げる反政府武装組織が無差別テロの手段として確保しており、本体は昏睡状態にあるが魔人能力は各地で猛威を振るっている。

特殊能力:蓼食う虫は夢虫
彼女の身体からは非常に強い鎮痛性・幻覚性を持つ麻薬物質、通称『胡蝶卵』が精製される。
この薬物の外見は銀を塗した米粒状で、口に入れた者は強い甘みを感じた後、急激な眠気に襲われ、現実では三十秒ほどの忘我状態に陥る。

患者はこの間、個人差はあるが数日~数十年間におよぶ神秘体験を経験し、老若男女問わず圧倒的な多幸感を得る。覚醒後、被験者の大半は現実感を失い、強い依存から反社会行動、反復的な使用による衰弱や自死などに至る。

この間の体験に多少の差異はあるが、肩甲骨から蝶の翅を模した器官を生やした少女が登場するという点で共通している。
少女は典型的モンゴロイド系人種の特徴を有し、年齢は十代中盤程と推察される(以後:遙か‐Bと呼称)。

遙か‐Bは被験者のあらゆる要望に応え、特に性的欲求に対しては自発的に協力している。この際、いかなる性的指向(嗜好)を持つ者も彼女を好ましく、美しく思ったと証言している。
なお、遙か‐Bに対して殺害を試みた際は成功したが、一定時間を経たのちに再出現し、再度施行した際も三日間というインターバルに変化はなかった。

相手を倒したい理由:組織に協力する義理はないが、能力を止める意志もない。

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