ガープ

文字数 721文字

様々な挫折(ざせつ)を重ね、
もはや神など信じられなくなってしまった。
そこで私は別の神、古代の神々を頼ったら、
何と召喚(しょうかん)できてしまった。

魔王ガープは銀色の髪に金色の瞳、
陶磁器のように白く美しい肌をもつ、
可愛らしい少女の姿をしていた。

『 ……それで、この私に隣国との戦争を起こして、
自国の腐敗上流階層や衆愚化した国民を淘汰(とうた)してほしいと?』

うなずく私に、ガープはこう言った。
『残念だけど、さっきその国の人が仲間のブエルから、
似たようなことを学んでいったそうよ。
……ただし、災害や病気、争いによる犠牲がなくても、
国民の健康や教育を高められる技術、とか言ってたわね。
そんなことができる国と戦えば負けるばかりか、
生き残った人達の評判まで地に落ちちゃうけど……いいの?』

顔色を変えた私に対し、彼女はさらに続けた。
『自分勝手な理想や絶望は、悲劇の元よ。 
でもまあ純真な貴方には、むしろどこまでも、
より少ない費用(コスト)でより多くの利益を求める、
人間の欲深さをこそ知るべきだったということかもね。
良ければ似たような知識を持ったフォラスを
紹介してあげるけど、どうする? 』

恥じ入った私は、こう答えた。
『いえ、申し訳ありません。一から勉強し直してきます』

悪魔に説教されるとは……確かに私は馬鹿だった。
だけどそれなら、他にも気づく人間はいるだろうし、
何も悪魔に頼まなくても、できるかもしれないからな。

しかし彼女は、本当に悪魔だったのか?
実は天使が化けていたのかもしれない、とも思った。
私のような、(いた)らぬ人間も救うために……。


ガープ:
ソロモン王が使役した、72大悪魔の中の一柱(ひとはしら)
人を無知な状態に陥らせたり、愛憎をかきたてたりすることができる。
一方、哲学や教養学の知識を与えることもできる。
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