第1話

文字数 1,466文字

「部活終わったんだからすぐ帰れよ」

中学校の教員の私は残業代がつかないテストの採点にすぐとりかかるため、生徒に声をかけて下校を促していた。
すると下駄箱のところにスマホが落ちているのをみつけた。

"人気機種で発売したばかりのスマホだけど誰のものだろうか"

と思い拾い上げると

「わりぃな先生、俺のだわ。彼女からのメッセージ見れなくて困ってたんだわ」

担任するクラスの不良の鈴木が頭を掻きながら現れたので、スマホを渡した。

"同じクラスの友達にもメシおごったとか、テスト前の部活停止期間には彼女にブランド品のプレゼント買うために買い物行ったとか大声で話していて最近羽振り良さそうだが何かあったんかなぁ"

とちょっと気になったが、テストの採点という最優先事項を実行することで頭が一杯の私はこの件は日和をみることにした。

数日後、職員室に鈴木の母親から電話がかかってきた、

「いつもお世話になっております。
私の息子がお年玉でもないお金を羽振りよく使っていたので、

"そのお金はどこから?"

と尋ねたところ知人の代議士先生の事務所から盗ったと申しまして、窃盗になりますので、学校にも連絡した方がよろしいかと思い連絡した次第でございます。」

「そうでしたか、代議士先生のところには謝罪に行かれましたか?」

「いえ、まだ行っておりませんが…」

「最終的には警察のご厄介になることと思いますが、まず代議士先生のところに謝罪に向かわれてはどうでしょうか?私も担任教師としての責任があり、今後の息子さんへの対応を考えたいので一緒についていきたいのですが…」

「そうしていただけるとありがたいです。」

電話のやり取りのあとすぐ、

父親の運転する自動車が憔悴しきった鈴木と顔面蒼白状態の母親をのせて学校に到着したので、それにのせていただき代議士先生の事務所に向かった。

事務所に到着し、応接室に通されると、

「愚息が窃盗を行ったこと、大変申し訳ありませんでした。」

そういって不良の息子がいるとは思えない真面目そうな父親が息子の頭をつかんで下げさせながら謝罪した。

私も

「担任として、生徒にの非行にすぐさま気づけなかったことは反省しきりです。これから警察に向かう予定ですが、まずは謝罪を、と思い参上した次第です。」

というと

「勇気をもって謝罪に来てくれてありがとう。悪いことをした過去は変えれないけど未来は変えていけます。彼の将来のためにも警察に行って非行歴がつくのはいけない。ご両親も担任の先生もしっかりした人のようだし今回はこれで水に流しましょう」

と代議士先生から言われ

不良の鈴木は

「本当にごめんなさい。俺これから先生や両親を悲しませないようにまともになります。」

と涙ぐみながら何度も頭を下げていた。

このやり取りをみて、私は、

"スマホやブランド品だけでも相当高額なのに警察に届け出ないって…"

と思ったのと、隣の鈴木の父親の様子を観るとなにか知っているらしくどこかそわそわしていて不思議だったのだが、
当人同士が決めることにとやかく言うことは野暮なので発言はしなかった。

数日後、職員室に警察から電話がかかってきた

「代議士先生のところに盗みに入ったところを現行犯で捕まえまして」

あいつまたやりやがったかと思い

「親御さんには連絡されましたか?」

と私がいうと少し困った口調で

「いえ、以前生徒さんが盗みに入っても被害届を出されなかったということで、それに味を占めたお父様とお母様が窃盗に入って息子さんが保護されるかたちとなったため先生に連絡した次第です。」

と言われました。




代議士先生、"そのお金はどこから?"



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