鬼ごっこ

文字数 1,769文字

……?


俺、疲れてんのかな?

転校してきて間もないし、仕方ないんじゃね?
そっか、そうだよな。しかし、空飛んでる女の子が見えるなんて、我ながらちょっとマズい気がするぜ……
はあ? 何言ってんだ、お前
だよな……病院とか行った方がいいかな
ありゃ、りぽりんだろうが
……あぁ?
あ、そっか。お前、転校生だからまだ会ったことないのか。りぽりんに
……悪ノリはやめろよ
ちげーよ。じゃあ、せっかくだから挨拶してこーぜ


……おーい! りぽりーんっ!!

……(こいつ、頭大丈夫か?)
なぁにー?
え、え
その女の子は、まるで透明な階段でもあるかのように、空からてくてくと歩いてきた
あのさぁ、こいつ、最近転校してきたんだよ。挨拶させようと思って
そっかぁ♪


こんにちは~

…………
……あれぇ~?
おい、シカトすんなよ! 失礼だろーが!
あ、いや、悪い、頭がまるでついていかなくて……
わたしはねー宇江佐りぽだよ!


キミのお名前は?

……か、兼目潤
そっかぁ! よろしくねぇ、カネジュン
よ、よろしく(カネジュン?)
お前、良かったなぁ、りぽりんにあだ名もらえて
え、うん……(良かったのか? 駄目だ、まだ頭が混乱してる)
……って、ヤベ! 俺、これから塾だった!


先行くわ! りぽりん、こいつよろしくね!

はあ!? ちょ、待てよ……!
うん! おべんきょ、がんばってねぇ♪
はーい!
……行っちまった
えへへぇ♪
……あ、じゃあ俺もこれで
え~?


あそぼーよぉ

遊ぶって……鬼ごっこでもする気か?
!! いいねぇ、それ♪
……いやいや。俺も急ぐんで、これで(こんな得体の知れない女に付き合ってられるか)
ぎゅっ
はぇ!?
せっかくいいお天気だしぃ、お空でやろーよ!
な、に、を!? をおおおおお!??
『りぽりん』に手を引かれた俺は、彼女とともに、空中を歩いていた
おっさんぽ、おっさんぽ、たのしーなー♪
なんで!? なんで!? こ、こわい!!(ぐすっ)
だいじょーぶ、だいじょーぶ

落ちたりなんてしないからぁ


ほら♪

そう言って『りぽりん』は、繋いでた手を離した
!!??(あ、死んだわ俺)
……って、あれ?
ほらねぇ♪

みんな、ほんとは、お空に浮かべるんだよぉ

勉強になったでしょ?

マジすか……
マジだよ♪
じゃ、カネジュンが鬼ねぇ!


だーっしゅ!


スタコラ-

……
俺は恐る恐る、足を前に踏み出した
うわっ……

すげっ……

歩ける……

マジか……

…………

うっひょおー!!
理性がぶっ飛んだ瞬間だった
逃がさないぞぉ! りぽりん!
あははは!


捕まらないよーだっ

まてまてぇー!
きゃぁ~♪
そうして俺たちは、空中鬼ごっこを全力で楽しんだ
日が暮れてきたねぇ


カエルが鳴くからかーえろぉ♪

カラスが鳴くから、じゃなかったっけ?
カネジュンが泣くからかーえろぉ♪
なんで俺!?
えへへ。最初、半ベソかいてたから♪
う、しょ、しょーがねぇだろ、いきなり空に浮いたりしたら、だれだって……
ごめん、ごめん♪
……つーか、今の状況に慣れてる自分が信じられん


なんかもう、空を歩けるのが当たり前って感覚になってきてしまったよ

当たり前なんだよぉ♪


あ、そろそろ雨が降ってきそうだから、ほんとに帰るねぇ

え、雨? こんな晴れてるのに?
ポツ……ポツ……


ザアアアアア……

うわ、マジか!

なんで分かったんだ??

えへへ。わたし、これでもお天気お姉さん目指してるから♪


じゃあね、カネジュン!


またあそぼーねぇ

そう言い残しりぽりんは、持ってた傘を開いてふわふわと去っていた
……ほんと、何者なんだ、あの人は
次の日
……駄目だっ!

何度試しても、身体は浮かばない!


……昨日の出来事は、白昼夢かなにかだったんだろうか


……なんだか、そう考えるのが自然な気がしてきた

よう、兼目!
あ、おはよう


あのさ、昨日の俺って……

昨日は悪かったなぁ、途中で帰っちゃって!


あの後、りぽりんとは仲良くなれたか?

え、あ……
あー! カネジュンだぁ
おはよー!


昨日は楽しかったねぇ、鬼ごっこ

あ、りぽりん、おはよう

え、つーか、なにお前、鬼ごっこなんてやったの……

おはようりぽりん!!
びくっ
またやろうぜ、鬼ごっこ!

むしろ、今からやろう! そうしよう!

今からかぁ……
ちょ、お前、ぐいぐい行き過ぎだろ……りぽりんも困ってるじゃねぇか
うんっいいよ!


あ、ユウトくんも一緒にやる?

やろうぜ、ユウト!
え……お、おう……
このあと、3人で遅刻するまで鬼ごっこした

(ちなみにりぽりんは学校には通ってないらしい)

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登場人物紹介

宇江佐りぽ。

あだ名はりぽりん。

毎日ふわふわと生きていたら、ふわふわと空を飛ぶことができるようになった。

その際の感想は、「やったぁ」であったという。

空は少し寒いので、いつもお気に入りのパーカーを着ている。

将来の夢は『お天気お姉さん』になること。

実際、何故か彼女の天気予測は百発百中である。

年齢不詳。

兼目潤。

あだ名はカネジュン。

メガネがトレードマークな凡夫。

14歳。

ユウト。

あだ名は特にない。

兼目の友人。

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