プロット

文字数 1,143文字

《起》
 片岡琴子はこの春、南桜中に入学したばかりの中学一年生。引っ込み思案な性格で、入れてもらった女子グループにも馴染めずにいた。
 母子家庭で、働きに出ている母親の邪魔はしたくないと、嫌なことも我慢して溜め込む琴子。そんな琴子に寄り添い、励ましてくれるのは、向かいの家の桜井夕夜だった。二つ上の夕夜は、琴子にとって兄のような存在である。
 琴子はかつて、夕夜に仄かな恋心を抱いたこともあるが、モテる夕夜に自分が釣り合うはずがないと諦めている。夕夜もまた、兄として一線を引くような態度をとっていた。
 琴子は次第に、隣の小学校から入学した高苗ハヅキに憧れるようになる。彼はミステリアスクールな一匹狼で、どのグループにも属さず、一人で平気なようだった。

《承》
 ハヅキを目で追うようになったある日、琴子は突然、ハヅキから家に来ないかと誘われる。琴子は不思議に思いながらも、ハヅキの実家である小さなカフェを訪れた。
 ハヅキは琴子に囁く。「美味しそうな血をしてる、危ない」。琴子は、ハヅキから吸血鬼の話を聞かされ、忠告される。
 琴子は、どこか浮世離れしたところのあるハヅキこそ、吸血鬼ではないかと思うのだった。
 それ以来、琴子は放課後をハヅキと過ごすことが増えていた。無理してクラスの女子に合わせるよりも、静かで物知りなハヅキと過ごす時間が楽しかった。夕夜は心配するが、何事もなく時間が過ぎていく。

《転》
 琴子は意を決してハヅキを夏祭りに誘う。二人で夏祭りに行くことになるが、その途中、琴子は二人の吸血鬼に襲われる。
 ハヅキが助けてくれるが、二人を相手に苦戦する。もう駄目だと思ったその時、夕夜が現れ、容易く吸血鬼を片付けてしまう。
 「僕をもてあそんで、悪い子だね、琴ちゃん」。夕夜の目は真紅に染まっている。吸血鬼は、ハヅキではなく、夕夜の方だったのだ。
 長年閉じ込めていた衝動が溢れ、夕夜は琴子を吸血しようとする。格闘の末、吸血鬼ハンターの血を引くハヅキのお陰で、夕夜はなんとか正気を取り戻すことに成功した。

《結》
 夕夜は吸血鬼の中でも、強い力を持つ純血種だった。人間に紛れて過ごす人生も、二回目だと言う。
 夕夜は琴子が赤子の頃から、特殊な血を持つ琴子を護ると決めていた。これまで琴子が吸血鬼に襲われずに済んでいたのは、夕夜のお陰だった。
 重たいほど琴子を愛している夕夜だが、吸血鬼の正体と衝動を隠すため、ずっと気持ちを封じていた。
 夕夜は、吸血鬼を釣るために琴子を利用するのを止めろ、とハヅキに迫る。ところがハヅキも、琴子を吸血鬼から護りたいと譲らない。
 どちらを選ぶか問われ、困る琴子。二人とも失いたくない存在だった。護られなくてもいいように、強くなろう。少しずつ、琴子は変わっていくのだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み