第1話

文字数 1,587文字

あるところにルビというおんなのこが、おとうさんとおかあさんと、それからネコのシャムとなかよくくらしていました。

あるつきのきれいなよるでした。
ルビがふとよなかにめをさますと、あしもとでねていたはずのシャムがいません。
いつもはあさまでいっしょなのに、おかしいとおもったルビはベッドからぬけだしていえのなかでシャムをさがしはじめました。
「シャム、シャム、どこにいるの。」
よんでもよんでも、シャムはでてきません。
「どこにいったのかしら」
ふと、まどのそとをみてみると、なんとシャムがおうちのへいをみあげて、そのままヒョイっとこえてしまいました。
シャムをひとりでそとへだしたことのなかったルビはびっくりしてあわてておいかけることにしました。
そとにでると、まんまるのおつきさまがよるのみちをてらしていました。
でも、シャムがどこへいったかはわかりません。
「こまったわ…。」
どうしたらいいかとかんがえていると、ルビはあることにきがつきました。
「もりのなかがひかってる。」
みるとおうちのまえにひろがるもりのおくで、きらきらとなにかがひかっています。
「シャムがでていったこととなにかかんけいがあるのかもしれないわ。」
ルビはおおきくいきをすってそのひかりをめざしてあるきだしました。


しばらくあるくと、まんまるなかたちをしたいけにたどりつきました。
そのいけはおつきさまのひかりをうけて、きらきらとまぶしいくらいにかがやいています。
「なんてきれいなの。」
ルビがうっとりしてながめていると、いけのふちにシャムがいることにきがつきました。
「シャム!!」
おおきなこえでルビがよぶと、
「ニャーン」
とシャムがへんじをしました。

と、そのときです。
いままでよりも、もっともっとまぶしいひかりが、あたりをつつみこみました。
ルビはめをあけていられなくなってぎゅっとめをつむりました。
「シャム、どこなの?」
ルビはめをつむりながら、シャムをしんぱいしてなんどもなんどもよびかけました。
「シャム、シャム!!」

「ルビ、ぼくはだいじょうぶだよ。」
とつぜん、みみもとでだれかがルビをよびました。
「さあ、めをあけて。もうまぶしくないよ。」
ルビはそのこえをたよりに、ゆっくりとめをひらきました。
すると、めのまえにひとりのおとこのこがたっています。
「だれ?」
ルビがきくと、おとこのこはにっこりとわらいました。
「ぼくがシャムだよ。」
「ええ??うそよ。だってシャムはねこだもの。」
ルビがいうと、そのおとこのこはゆっくりとはなしはじめました。

「ぼくはほんとうはむかしにんげんで、あるくにでまほうつかいのみならいをしていたんだ。
でも、あるときわるいまほうつかいがやってきて、ぼくのまほうのちからをうばい、そしてぼくをねこにかえてしまった。
もとにもどるには100ねんかん、まんげつのひかりをあびつづけないといけないといわれたんだ…。」

ルビはびっくりしておとこのこにききました。
「いまにんげんのすがをしているってことは、きょうが100ねんめだったの?」

「そうだよ!きょうでやっと、にんげんにもどることができたよ。ルビ、きょうまでなかよくしてくれてありがとう。ぼくのほんとうのなまえはラルだよ。」
ラルはぐるっとゆびをまわし、ルビがまばたきをするあいだにほうきをだしてみせました。
「とってもさみしいけれど、ぼくはぼくのいたくにへかえるよ。ずっとずっと、かえりたかったから。」
それをきいて、ルビもとってもさみしかったけれど、にっこりわらっていいました。
「そうね。そうしたほうがいいわ。でもまた、いつかわたしにもあいにきてね。」
「やくそくするよ。」
「やくそくね。」
そういうと、ラルはほうきにまたがって、あっというまによるのそらのなかにきえていってしまいました。
ラルがみえなくなってしまったとき、ルビのてには、まだあたたかいシャムのくびわがにぎられていました。
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