第1話

文字数 1,193文字

私は罪深い女でした。

私は風俗嬢だったのです。

親の借金のため、兄弟の学費のためなどの高尚な理由などなく、ただただ遊ぶ金欲しさに、ブランド物を身につけるために、この業界に足を踏み入れてしまいました。

新宿歌舞伎町では、簡単にそういう仕事が見つかります。見てるだけ、触るだけでいい。ここからどんどんエスカレートしていき、もっとお金が欲しくなった私は、渋谷へ。ナンバーワン風俗嬢になりました。それでもまだ足りない。今度は横浜のSMクラブへ。一回のお仕事で10万円以上が手に入りました。それでもまだ足りない。

当時の私は、お金が手に入れば幸せだと信じていました。一日に数十万円を稼ぐことを知って、お金がうるおっているのに、ずっと何かが足りないのです。それを埋めるために、私は食べて食べて食べまくりました。お酒も飲んで飲んで飲みまくり、最後は全て吐いてしまう。この暮らしを数年間やっていました。毎日が地獄。こんな日々が続けられたのは、短時間で数万円を稼ぐお仕事のおかげ。

この時の私は、まだ神様を知りません。

やめたくてもやめられない。どんなに泣き喚き、苦しくても、同じ日の繰り返し。抜け出し方がわからない。何度、自殺しようとしたか。

病気になって、実家に戻り、母に連れられて教会へ。そこで神様を知りました。

私が足りなかったのは、愛だったのだ。そう気がついた時、心の底から溢れてくる温かいものに包まれました。そして、大泣きしました。母に抱かれる幼子のように。

救われた、そう思う反面、自分の肉による行動が恥ずかしくて、罪悪感でいっぱいになりました。そんな時、心に響いてきた言葉がヨハネによる福音書8-11です。

姦淫で捕まった女の話。イエス様は罪を犯した女に石を投げろと言いました。ただし、罪のないものしかその資格はありません。誰も石を投げなかった。イエス様は「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」と言いました。

この部分にどんなに救われたかわかりません。

そして、数十年後の2022年12月。

私ははじめて、罪の告白で当時のことを語りました。牧師夫妻が何も言わずに聞いてくれました。難聴の牧師先生と日本語が苦手なアメリカ人の奥様には、日本語のまどろっこしい表現は通用しません。

私はなぜ、あんなことをやっていたのか? 全ては神様のご計画だとしたら、私は伝えることができるかもしれない。いや、伝えなければならない。私は散々、肉の欲によって生きてきました。それでも、救われた。この事実を伝えたら、他にも救われる人がいるかもしれない。

コロナの影響で、風俗業界も大変だと思います。愛に飢えたもの同士が出会う場ですが、本当にそれでいいのでしょうか。私は、本当の愛を知って救われました。

神様、どうか昔の私のような人が本当の愛を知って、あなたの愛を感じて、心の底から癒され、そして救われますように。
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