第1話 かがみよかがみ2

文字数 2,059文字

「かがみよかがみかがみさん

世界で一番美しいのはだあれ?」



「お妃様、

世界で一番美しいのはあなたです!」



鏡のこっち側では・・・



ピロリーン

お妃様はスマホをチラ見。

お友達からSMSです。

「林檎様、

聞いてほしいことがありますの。

今日はそちらへお伺いしてよろしいでしょうか・・・

グッスン( ;∀;)」



お妃様は林檎というお名前のようです。



「糸車様、

おはようございます。

今日はいかがなされました。」



お友達は糸車というお名前のようです。



「林檎様、

些細なことなんですの。

お恥ずかしいですわ。

でも、なんだか気力がわかないんですの。」



「糸車様!お気を確かに!お話をお伺いしたいです。

よろしかったら私のほうへおいでくださいませ。」



最後の一文を送信し終わるや否や、

ぽん!

弾ける音と白い煙がしゅわわん、

林檎お妃のお部屋にご婦人が現れました。



「林檎様~!」

「糸車様~!大丈夫ですか?

いったい何があったのですか?」



「ねえねえきいてよきいてよ。

仲間外れよ!イケズですよ!妖精組合の先輩軽視よ!」



お妃様は紙とボールペンを用意しました。

「状況を正確に把握するために、メモを取ってもよろしいですか?」

「はい。うちの国の王様にお姫様が生まれたのは御存知かしら?」

「はい(えっ、初耳?私、情報疎くなってます?(-_-;))もちろん存じ上げておりますわ。」

「私たち王室付き妖精は王家にお子様が誕生すると、お子様におまじないのプレゼントをするのが伝統なんですの。」

「まあ、素敵ですわ!」

「そう!素敵で名誉なことなのよ!」



ご婦人糸車様は妖精なんですね。



妖精糸車様はお姫様誕生のお祝いの席にうっかり呼び忘れられたというのです。



(さて、予想されがちな対処法のひとつに

『①王宮に怒鳴り込んでお姫様に呪いをかけて15年後に呪いを果たす。』

というのがありそうですが、

まだまだほかにやりようはありそうですよね。たとえば・・・

『②日を改めて、妖精組合の話の分かりそうな人に手紙などをしたため、お姫様を祝う機会を取り持ってほしいと相談する。』

といった、穏当なやり方です。)



「呼び忘れるなんて、がっがりですわね。」



「ですよね、ですよね。」



「妖精のお知り合いで相談できる方は?」



「もちろん私だっていい大人です。

妖精組合の知り合いに、なんで私が呼ばれなかったのって聞いたわよ。ぜひお祝いしたいから、何とか取り次いでいただけませんかって、打診もしてみましたわよ。」



「そうですか・・・。」



「そうしたら、なぜか数日のうちに『おにかいらんばん(仮)』に『オワコン妖精、お祝いはぶられ逆切れ、呪い!』なんてスレッドが立ち上がっているじゃありませんか!?」



「おにかいらんばん(仮)」は、ご近所問題・家族内のごたごた等、人間関係のこじれ等が虚実入り乱れてアップされているインターネット上の掲示板。対人関係のあるあるお悩みが多いので、関係ない話でも自分のことに思えることもあるあるです。



「まあまあ、糸車様、落ち着いてくださいませ。」



お妃の林檎様はスマホで「おにかいらんばん(仮)」を検索し、「オワコン妖精、お祝いはぶられ逆切れ、呪い!」というスレッドが☆31に達しているのを見つけて

「これかしら?」

と、妖精糸車様に見せました。



「それですわ。これが落ち着いていられますか。呼び忘れられて面目丸つぶれで困っているのは私なのに、私と名指しはされてないけど呼ばれなかった妖精がお姫様に呪いをかけて、『15年後に呪いが完成する、おっほっほ』と捨て台詞を吐いたことになっていて『まあなんて心の曲がった妖精?』『年甲斐がなさすぎますことよ』って、非難の集中砲火を浴びていますのよ。誓って、私は呪いなんてかけておりません。」



「まだ、糸車様の事例が利用されたとは限りませんし、どなたかががやったとか悪意があったとか、今の段階で決めつけるのは得策ではないかもしれませんよ。」

「そうかしら。」

憤懣やるかたない妖精糸車さん。

「全然関係ない話かもしれませんし、だれか心無い人が作り話をしているだけだったとしたら、腹を立てるだけ損というもの。お話はお聞きしますが、あわてて仕返しとかしないでくださいよ。」

「このスレッドを真に受けて、王家が私を反逆者と誤解しないかも心配なんですけど・・・。」

(申し遅れましたが、妖精糸車様の国とお妃林檎様の国は別々です。)

「確かに心配ですわね。その誤解は解いたほうがよろしいかもしれませんわね。」



妖精糸車様は心配のあまりやや憔悴のご様子。



お妃様は昨日隠し厨でこしらえたアップルパイを嬉しそうに持ってきて、ドーンとテーブルに載せました。

「見て見て!昨日作っちゃった!一人じゃ食べきれないから手伝ってくださらない?」

「おお!さすが林檎様!」



お妃林檎と妖精糸車は

何のためにここにいるのかすっかり忘れて

アップルパイを食べまくるのでありました。



めでたしめでたし!?



この二人が如何様に「おにかいらんばん(仮)」スレッドの誤解を解くかは・・・?

この続きはあるかもしれませんし、ないかもしれません・・・あしからず・・・。



















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