序章

文字数 517文字

 お前らには“輝かしい未来”とやらがあふれているんだろう?

 僕たちは違う。泥水すすって道端に落ちた小銭拾って生きているようなものだ。

 

 今のこの世の中にそんな奴がいるのかって?

 いるに決まってるじゃない!

 

 いるさ……お前らはいつもそれを目にしている。

 目にするのもおぞましい、汚物を見るような目でな……。

 

 ただ、君たちは分かってない。

 汚物は社会からの排泄物だ。

 君たちが生み出したものなんだよ。

 

 ただ、安心していいわよ?

 汚物は汚物なりに何とかやってるんだから。

 アンタたちが生きるのに困らない、退屈で安定した人生の邪魔はしないわ。

 

 ……見ていけばいい。

 俺たちの生き様……ときに目をそむけたくなる現実を。

 

 僕たちは100人のうち90人が金を失い、5人がトントン、1人が(ぎょう)(こう)に酔い、1人が堅く日当を得る、そんなホールで生きている。

 

 じゃあ、残り3人はって? それはねえ、ふふふ……

 

 糞が糞をののしり、奪い合う、反吐(へど)の出るようなパチスロの世界で

 

「僕と」

「アタシと」

「俺が」

 

 3人で勝ち取るから。

 

 何を勝ち取るかって?

 

 まあ、ぶっちゃけお金なんだけどね。

 

 でも、俺たちにとっては……

 

 それが“輝かしい未来”だ。
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登場人物紹介

ホールで異彩を放つ若き司令塔
「金をドブに捨てるのが趣味か?」
「上ブレも下ブレもある。確率なんて一生収束しない」
「次のステップを考える時期だな」

店のクセを見抜き 状況を瞬時に読み取る
「決めたよ、君に」
その名は エリート

彼を中心に物語は動き始める

自分の直感を信じて 思うままに楽しんで打つ
「ナンパにしては斬新じゃない?」
「アンタにあげるよ あの打ち子君に打たせてあげて」
「ゴメンて、我慢できなかったの♪」

美貌と強運をあわせ持つ 麗しき女神
「か、かわいいなあ、もう!」
その名は キャバ

花咲く陽葵(ひまわり)のように 彼女は輝き続ける

耐えること 勝ち取ること
それは 生きること
「金は……欲しい、死ぬほど欲しい」
「飢え死にって……実感したことあるか?」
「そうか…働くって大変なんだな……」

純粋な渇望は 青年を執念の獣に変える
「俺に……任せろ」
その名は ヲタ
 
跋扈はびこるホールで 最後まで立つのは彼だ

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