第1話

文字数 725文字



随分と長い間、私はずっと独りだった。辛いこともたくさんあった。でもあなたはそこにいなかった。あなたは自分の人生から私を身勝手に閉め出して置き去りにして、それから二度と戻ってくることはなかった。もう忘れなさい、その想いを手放しなさい。みんなが口をそろえてそう言った。でも、私のあなたへの気持ちは言葉にはできないほどに大きくて、本物で、そんなことできるはずがなかった。私の心をズタズタにしたあなたが、いつか、この壊れた心を治しに戻ってきてくれるんじゃないかって、そう信じてあなたを待った。
ずっと、待ってた。

でも悲しいほど明確に、あなたは二度と戻ってこないことが身に染みてわかった。
もうあなたに頼ることなく私は自分で自分の粉々になってしまった心を治すしかないこともわかった。一人で治すしかなかったの。
長い時間をかけて私は自分ひとりの力で治したんだよ。

なのに、
それなのに、どうして。今更。

さよならを言ったあの日から君を忘れた日はなかったんだなんて言葉までさげて。
まるで私たちの間には何の問題も起こらなかったかのように、またあの日々に何もせずとも戻れるかのように。あなたは当たり前のように私の元へ戻ってきた。
二人がぶち当たった壁を忘れて、きっと二人で交わした言葉も約束も忘れて。
あなたは私の目の前に現れた。
何も覚えてないくせに。何も感じてないくせに。何も、何も知らないくせに。

あなたにも伝わるような言葉がうまく見つからない。あなたにも理解できるようにはどういったらいいのかわからない。
ただ、今更過ぎるよ。もう遅いよ。
だからもう自分を辱めるのはやめて。あなたが選んだ道なんだから。自分で選んだ道を受け入れて。

私は一人で前に進んだ。
今度はあなたが一人で前に進む番。
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