いちごソーダ

文字数 531文字


 チン――!

 チン――! 


 桜の木の下で、グラスの音が軽やかに鳴る。


 パチ、パチ、パチ、パチ――!


 いちごのぎっしり詰まったシャンパングラスの中で、ソーダが一斉に拍手をし、大きな魔女帽をかぶった新米魔女たちが、お祝いの言葉に囲まれて笑い声をはじけさせる。



「おめでとう!」

「ありがとう!」

「おめでとう!」

「あなたもね!」

「お疲れさま!」



 見習いは今日で終わり。



「さあ、みなさん。いちごは一粒も残さず食べること!」



 魔女学校の理事長先生が、笑顔で言いわたす。

 この、いちごソーダを全部飲み干さないと、本当の魔女にはなれない。



「悪いことに魔法を使ったら、この、いちごが体の中で弾けますよ!」

「いやだわ、飲みたくない!」

「あら、もう飲んじゃったの?」



 笑い声を立てながら、
 桜の花びらが、はらはら落ちる。

 黒い魔女帽の上に乗ると、白に限りなく近いうすい色が際立って、小さな花びらの形をくっきりと見せる。

 今日で終わり。今日は始まり。

 彼女たちは明日から、魔女として世界中に旅立っていく。


「おめでとう!」

「おめでとう!」

「行ってらっしゃい!」

「わたしは来年、きっと行くわ!」

「きっと、来てね。待ってるわ!」



 いちごソーダのグラスが空になったら、彼女たちは本物の魔女になる。









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