公園の砂場にて

文字数 1,049文字

ボクとたっくんは、いつものように公園で遊んでいた。
今日は砂場で遊ぶんだ。
ここの公園の砂場、広いのに遊んでいる子がほとんどいないから二人じめできる。
水をかけて少し固めて、高く盛って山を作る。
そして、両側から掘って行ってトンネルを作るんだ。
初めのうちは、もっと砂盛ろうぜー、とか、道具何か使ってられるか、手で掘るぞー、とか騒いでいた。
でも、どんどん二人とも言葉がなくなっていく。
集中してたというのもあるんだけれど、何かおかしい。

確かにボクたちの手は大人に比べて小さくて短い。
思っていた以上にトンネルを作るにも時間がかかるんだろう。
それでもおかしい。
砂を盛った時に、二人で手を伸ばしてちゃんとトンネルができる程度の長さにはしたはずなのに。
もう、肩が砂山にかかっている、なのにたっくんの手に届いていない。

「なあ、ちゃんと掘ってるよな…」
たっくんに言われ、ちょっとむっとしながらも
「掘ってるよ!もう肩が山にくっついてる、崩れないか心配だよ」
と答えた。
「うん、オレもなんだけどさ…なんか、おかしくね?」
「だよね、この山、そんなに大きく作ったっけ?」

二人で砂にはいつくばって砂山に腕を突っ込んで無防備状態。
子どもながらに何かヤバい気がすると思っていた。
その時。
「あ!」
「お?」
二人で同時に声を出した。
指先にやっとお互いの指が触った……

「うわああああああああ!」

そう思った直後に二人で悲鳴を上げて手を引き上げていた。
何だ今の、何だ今の、何だ今の、何だ今の。
指先に触れたのは、変にぶにょっと柔らかく決して気色良いものではなく、そしてそれはたっくんの指ではなかった。
そして、何かが手首をつかんだんだ。

息を切らせて、引き上げた手を見た。
中指に赤黒いどろりとした液体が少しついていた。
手首は、そんなに強くつかまれなかったはずなのに、結構はっきりと跡がついていた。
砂山の向こうで、はっはっとボクと同じく息を切らしているたっくんの気配を感じ、同じ状況だと知った。

勢いよく立ち上がり、ボクは砂山を思いっきり踏んだ。踏んで壊した。
たっくんも足で蹴散らし、砂山を壊していった。

公園に来た時とほぼ同じ状態に砂を平らにし終えて、二人で顔を見合わせた。
お互い表情は硬く、顔色も良くなかった。
無言のまま、公園内にある水道で丹念に手を洗う。
二人とも、執拗なまでにごしごし洗った。
こわごわと道具を片付けて、やっぱり無言のまま家に帰った。

次の日も、その次の日も、何もなく普通に過ごしている。
でも、僕らはその後、絶対に公園の砂場には近寄らなかった。
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