プロット

文字数 2,356文字


起)両親の仕事の都合で引っ越しの多い南雲時雨は、中学二年生の秋からを山の麓にある椚村で過ごす事になる。
普段と変わらない様子で引っ越しの片づけをする時雨だが、頭上へ目を向けるとこちらをじっと見ているなにかの影。時雨は幼い頃から人間ではない人ならざるモノ、つまりあやかしが視え好かれる体質だった。
幼い頃に視えてしまう事が災いし生死をさまよった事がある時雨は、少しだけ厄介だなと心の中で思いながらもあやかしをないがしろにできない時雨は、この村でもなかなかあやかし達を避ける事ができずに共存する毎日を送る事になる。
話しかけてくるあやかしに適当な返事をしながら掃除をする時雨だったが、そんな中であやかしはなにを思ったのか時雨の事を「獣臭い」と言った。なにを言っているのかわからない時雨はそのまま、気にしない素振りで掃除や片づけを続ける。
しかしそれは、時雨の中で違和感として顔を覗かせた。

承)転校初日、時雨は帰り道に大型のあやかしであるジョロウグモに目を付けられ追いかけられる。寸でのところで逃げ込んだ低めの山を駆け上がっていくと、山頂には狛犬が片方いない神社が建っていた。
昼間にクラスメイトからそこが「神の眠る山」である椚山で、この地に昔いた荒神が封印されている犬原神社が山頂にあると聞かされていた時雨だったが、それよりも優先すべきは自分の命。
ジョロウグモから距離を置こうと鳥居をくぐると、追ってきたジョロウグモはなぜだか鳥居の前でなにかに怯えた様子を見せながらどこかへ逃げて行ってしまう。
原因はわからないが状況に安堵をしていると、どこからか鈴の音が聞こえた。
鳥居ではなく社の方から聞こえたそれに目をやると、そこにいたのは長身で銀髪、糸目という風貌に狛犬を模したお面を頭に添えた男だった。時雨を見るなり物珍しそうに近づいてきた男は狛犬のあやかし狛原と名乗り、時雨の匂いを嗅いでなにかを考えるように笑いながら「この人里はあやかしが多く、あやかしを視る事ができる人の子は格好の餌食だ」と教えられる。
転校早々に知りたくなかった話を聞いた時雨はこの世の終わりみたいな顔をするが、同時に狛原はある提案を出す。「自分が守ってやらない事もない」と。
上手い話には裏があると聞いていると、そのまま腕を捕まれ社へと引っ張り込まれる。その先にあったのは、あやかしの世界『幽月(ゆうづき)』だった。
狛原が付けているのに似た狐のお面を渡された時雨は、そのままかくりの中を連れられる。
狛原から「お面は人の子である事を隠すためだから外してはいけない」という事と「あやかしに名前を教えてはいけない」という事を言われた時雨は、そのまま小さな寺小屋へと案内される。狛原は時雨を守る代わりに、あやかしの学校である寺小屋へ通うよう言い出した。
狛原は狛犬のあやかしであると同時に、犬原神社の「神様代行」だったのだ。
人の子とあやかしが同じ学び舎で学んだらどうなるかという事を実験したいからという理由だけで出された提案に最初こそ嫌がったが、今のところ無害である狛原の様子と自分を守ってくれるという条件を考え承諾をする。
こうして南雲時雨は、「雨」と名乗り昼は人の学校へ夕方はあやかしの学校へ通う事になる。

転)ダブルスクールで毎日目まぐるしい中でもたくさんの事を学び、時雨は少しずつ成長をしていく。
あやかしが人の子に存在を畏れられる事で命を保つという事や、自分のような視る事のできる人の子はかなり希少である事。そして同時に、あやかしの持つ妖力が時雨自身の中にもあるという事を。
時折クラスメイトの座敷童が昼の学校の近くに出たり狛原が校内にいたりと昼の生活にもあやかし達は浸食をしていたが、時雨自身そこまで気にしてはいなかった。
人の子であるというのをバレないように過ごすそんな寺小屋である日、人の子の学校と同じ事をしようと狛原が提案をし遠足が開催される事になる。
向かった先は幽月の中にある金魚が浮かぶ丘。
空を金魚が泳ぐ不思議な光景を背に観光をしたり弁当を食べたり、楽しい時間を過ごしていたが、クラスメイトの前で突然お面が割れ人の子である事がバレてしまう。
戸惑うみんなの様子を見た時雨は今までの経験から本能的に襲われると錯覚し、逃げるように離れる。しかし逃げた先には見知らぬあやかしがおり、攫われてしまう。
見知らぬ山へ連れていかれた時雨は死を覚悟するが、狛原のお面が時雨を守り、時雨自身の妖力も狐の形になりあやかし達を蹴散らす。
そこでわかったのは時雨はただの人の子ではない、「犬原神社の荒神」の魂を持って生まれた存在だという事。
自分が獣臭いと言われた事に納得をしつつも、劣勢のままなところに、寺小屋のあやかし達が助けにくる。
例え人とあやかしでも、友達だから。

結)自分を攫ったあやかし達を倒す事はできたが人の子であるとバレた以上、幽月には行けない。
そう考えた時雨は、ひっそりと犬原神社から距離を置き普通と言える生活に戻っていた。あやかしの友達という少しだけ非日常で今までとは違う形は嫌いじゃなかったが、騙していた引け目もあった。
数日代り映えのしない生活を送っていたが、ある日時雨はたまたま友人と遊んだ帰り道に椚山の近くを通りかかる。楽し気な話声がどこからか聞こえるが、知らぬふりをしようと顔を背けると、隣をいつからか狛原が歩いている。
狛原は時雨を放すつもりはないという事と契約は残っているという事を告げ、幽月に連れていかれた時のように犬原神社へと向かう。
自分があやかし達を騙していた事に対しての引け目から会いたくないと話す時雨に、狛原は誰も気にしていないと笑い飛ばす。
「それに、どうせお面はカバンの中だろう」
「お前、本当になんだよ……そうだけどさ」
「なに、ただの物好きな狛犬だ」

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み