第5話 生徒の靴をねらう真相

文字数 1,503文字

翌日の午後。みよちゃん、あやちゃん、たっくん、ともちゃんが

塾へ顔を見せると、いつも通り、授業を受けた。

みんな、本当は、先生の授業を受けたかったらしく、

いつになく、元気に、発言したりしていた。

「いったい、どうやって、真犯人を見つけ出すんだ? 」

 教務室に集まった4人の母親と山城君の父親が、

日向を取り囲むようにして詰め寄った。

「まあ、見ていて下さい。そのうち、現れます」

 日向が、どこにあるのかという自信を見せた。

日向は、カー五郎を塾の玄関が見える位置にいさせた。

「カー五郎。よく聞け。

もし、不審者が下駄箱へ近づいたら、

その者の後を追うんだ」

「カー」

 カー五郎が鳴いた。日向の耳には、「わかった」と聞こえた。

1日目は誰も現れなかった。

ようやく、3日目。来るべき時が来た。

「カーカー! 」

 授業を受けていた生徒たちの耳に、

カー五郎の異変を報せる合図が飛び込んで来た。

4人以外の生徒たちまでもが一斉に、

窓の前へ集まった。

「どこどこ? 」

「誰? 」

「席に戻りなさい! 」

 先生が一喝すると、みんなが渋々と席に戻った。

 日向は、不審者を追いかけたカー五郎を信じて待つ事にした。

授業が終わって、生徒たちが玄関へ押し寄せた。

「ない! 」

 たっくんがさけんだ。

「わたしのもだ」

 みよちゃんがさけんだ。

「なんで、わたしたちのばっか‥‥ 」

 あやちゃんがさけんだ。

「えー」

 ともちゃんがさけんだ。

「山城君のは? 」

 たっくんが、山城君に聞いた。

「僕のもない」

 山城君が答えた。

他の生徒たちは、彼らを横目で見ながらふつうに帰って行った。

幸い、スペアの靴を持って来た為、彼らは帰宅する事が出来た。

「どうして、わたしたちのだけ盗まれるんだろう」

 みよちゃんが言った。

「山城君のもないと言う事は、山城君は違うと言う事になる」

 日向が告げた。

「靴に共通点はあるんですか? 」

 先生がいいところをついた。

「どうでしょう。メーカーが同じわけでもないし、

色もサイズも違います」

 迎えに来たみよちゃんの母親が答えた。

「きっと、何かあるはず」

 日向が告げた。

「あの。みんな、同じクラブに入っています」

 迎えに来たたっくんの母親が言った。

「そう言えばそうだわ」

 迎えに来たともちゃんの母親が言った。

「そのクラブでは、生徒みんなが同じシューズを

履くきまりになっているんです。

この塾に通っているのは、

わたしたちの子供だけですよ」

 みよちゃんの母親が言った。

「クラブに通う他の生徒たちに、

同じ被害がないか聞いてみます」

 ともちゃんの母親が申し出た。

それから2日後。4人の母親たちが、先生の部屋を訪ねて来た。

「やっぱり、数人が同じように靴を盗まれていたみたいです」

 ともちゃんの母親が告げた。

「全員というわけではありません。盗まれていない子たちは、

隣町に住んでいる子たちだとわかりました」

 たっくんの母親が告げた。

「つまり、被害があったのは、

この町のクラブに通う子供たちというわけか」

 先生が神妙な面持ちで言った。

「カー五郎が、盗人のアジトをつきとめました」

 そこへ、日向が姿を現すと言った。

「よし、今から、行ってみよう」

 先生が言った。

「あの、オレも行かせて下さい! 」

 長屋の外へ出ると、山城君の父親が立っていた。

「いいですけど‥‥ 」

 先生が戸惑った様子で言った。

「みなさん、先生。本当にすみませんでした」

 山城君の父親が驚いた事に、その場に居合わせた全員に頭を下げた。

「いいですよ。済んだ事ですし、今は事件解決が先です」

 先生がそう言うと、他の人たちも同意を示した。

「カー! 」

 カー五郎が飛んでくるのが見えた。

「行きましょう! 」

 日向が告げた。







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