第1話 自然生態学の動的モデルの社会科学への応用

文字数 1,306文字

自然生態学は、環境調査を通じて、動植物の変遷(推移)を評価予測する学問である。あるがままの自然を受け止め、その構造を明らかにすると共に、平衡状態(見かけ上変化がない均衡の取れた状態)を明らかにする。
例を上げれば、森にある木の樹齢や、その数はある一定の範囲に保たれる。何らか因子で、例えば、落雷などで大木が倒れると、その跡地に次の木が生えてくる。大木がある時は、日陰になって成長できなかった木が、光を浴びて成長を始めるのだ。短期的な観点からすれば、変化しているが、数十年、数百年の時間で見れば、やはり森の基本構想は維持されたままだ。
また、別の例を上げれば、肉食動物、草食動物、草の関係も平衡状態が存在する。
草が増えれば、自然と草食動物が増える。草食動物が増えれば、肉食動物が増える。また、草が減る。 肉食動物が多く、草が少なくなれば、草食動物が減る。草食動物が減れば、肉食動物が減り、草が増える。
この様に、増えたり減ったりを繰り返しながら、結果的には常に同じような状態を保つ。

しかし、これらの構想はあくまで、現状の観察および過去からの評価である。限られた空間内では保たれていた環境も、外部からの強い因子が加わることで、平衡状態が崩れる。

例えば、ある森にリゾート開発を行い、根こそぎ木を伐採し、その上にレンガやコンクリートで出来た建築を建てれば、もはやそこで木が成長して、森を維持することはない。

例えば、毛皮目的で肉食動物を殺し、絶滅させれば当然均衡は保たれない。

この様に、人々の行動によって、自然生態系は大きく、変わってしまうのだ。
これまでのような、現状の自然観察からでは予測出来ない未来が訪れる。
そこで考案したのが、自然生態学の動的モデルである。自然生態学は、前提として、変わらない(平衡状態になる)を置いていた。つまり、静的モデルである。
それに対し、動的モデルは、常に変わり続けるもの、そして、その因子は内のみでなく、外の因子も加わる という前提を置く。
外の因子といっても、その種類、影響の強さ、発生確率まで考えると莫大な因子となる。
これまで、そんな事を計算することは不可能であったが、近年のAI技術、中でも自己学習型ディープラーニングを駆使することで、世界中のあらゆるリアルタイムのネット情報から予測することで可能となった。

そして、主に人間活動と自然生態系との関係を明らかにしてきた。
事例を一つ上げれば、タピオカブームにより、森30ヘクトメールが消失する予測を見事に的中させた。
これは、TwitterなどのSNSへの投稿頻度、その影響から、原料のキャッサバ(芋)の需要予測、そしてキャッサバの適した生産環境、その環境に合致した地域における人の生活状況(主に所得)から、候補を絞り、生産地として伐採される森を特定した。
その一致率は、73%と改善の余地はあるものの、画期的な発見であった。
そして、今、その動的モデルは、自然生態学のみならず、社会科学へ応用されている。

つまり、人間を自然の生き物として扱い、これからを予測し、コントロールするのだ。

※全部妄想です
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