第1話

文字数 889文字

先日起こった東大前刺傷事件は衝撃的であったが、犯人が高校の後輩であると知って再び暗澹たる気分になった。

挫折感から自暴自棄になって犯行に及んだものと思われるが、何の関係もない他人を道ずれにしようとした卑劣な行動には情状酌量の余地はないと思う。

高校2年生。
本来はまぶしい青春時代の真っただ中である。
ただ青春時代は挫折を経験する残酷なときでもある。
高い目標を掲げている者ほど、挫折した時の虚無感や自己嫌悪の気持ちも深いと思う。
それは大学受験だけではなく、スポーツや芸術の世界に羽ばたこうとしている若者にも共通することだろう。

「何であんなものが人生の全てだと思い込んでいたのか?」と私自身も若かりし頃を振り返って思ったことがある。
だけど、青春時代には比較的簡単に「思い込み」の魔法にかかってしまう。
そして、「〇〇だけが全てじゃない。」と他人から言われてもそう簡単にはこの魔法は解けない。
ただ、夢と現実を擦り合わせる経験を積んでいつか魔法から醒め、人は大人になっていく。

彼の場合はそうなる前に更に自らを追い込んで、ついには「黒魔法」のとりこになってしまったのだと思う。

まず罪を償い、その後はたとえ門前払いされても被害者の方に謝罪すること。
そのうえで、更生の道をしっかり歩いてほしい。
幅広い教養(リベラルアーツ)を身に着けてほしい。
まだ彼には残された時間がある。

そして、突飛な考えかもしれないが、許されるなら母校の教師になってくれたらと思う。
自らの闇と犯した罪に向き合った経験を生かして、後輩を善導してほしい。


GOD SAVE THE WORLD
願いをかけて 呪いをといて
GOD SAVE THE WORLD
全てのことが起こりますように(*)


1888年に創立された時、母校は浄土宗の坊さんを養成する学校であり、宗祖の法然は「煩悩に満ちた罪深い者こそが救われなければならない。」と固く信じていた。


私が知っている約50年前の校風が引き継がれているのなら、ハードルは高いけれど決して実現不可能なことではないように思う。



(*)銀杏BOYZ 「GOD SAVE THE わーるど」
   の歌詞より抜粋
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