”オカン”センキュードライブ

文字数 1,005文字

「余命は・・・2年です・・・」

「・・・」

この時、俺は死を悟った。まだ33なのに・・・。貴弘は不治の病で余命宣告をされた。
哀しみがこみ上げてくる。どうしよう2年なんて・・・2年なんて・・・。

「あれから1年か・・・」

貴弘は1年間を過ぎて入院していた。あの余命宣告をされた日は今でも覚えている。
大阪行きたかったなー。親孝行なんてしてなかったな。
18で東京出てうつ病になって滋賀に住んで余命宣告・・・。
人生めちゃくちゃだなぁ。

「そうだ・・・大阪行くか」

そして担当の医師に言った。

「最後の思い出ですか・・・体は大丈夫でしょうか、分かりました。」

と医師はOKしてくれた。最初で最後の親孝行だ。
そして二日後、貴弘は大阪へ向かった。

ガチャ・・・。
「あらお帰り・・・」

オカンは余命2年の事を知っていた。

「今からドライブしない?」
「ドライブ?」

これが俺なりの親孝行だ、これしかできないと思っていた。
そして赤い車に二人は乗った。

「ドライブなんて嬉しいわ」
「親孝行なんてしてなかったし・・・」

と運転を進めた。
あぁー、この景色、野球部の時通っていたなぁと思った。
親孝行・・・これでいいか。

「あんた、18ん時に言ったよね、東京に行くべさって言って」
「あぁ、あの時は、何も知らなかった頃だ、大人っていうものを」

と過去を振り返った。オトンに行くって言って夜に家を出て東京へ向かった。
あの時は金もなかったし・・・何にもわからずだったんだなぁと。

「でも、あの時もいいじゃない、夢を描いていたし」
「うつ病になったころは・・・」

うつ病を26ぐらいで発症して一回家に帰った、その時はオトンはまだ生きていた。
でも28の時死んだ・・。俺、悲しんでいたよな・・・。すぐ滋賀に移住しちゃったし。

「まぁ、でもいいじゃない、人生そういうものよ。過去を振り返って人生を見直すっていうものもいいものよ」
「そうかい」

と海沿いの道を走った。いい景色だ。オカンと見たような分からないけどやっぱこの快晴の大空を見た。

「今日はありがとう」
「親孝行を兼ねて思い出作りよね・・・いい思い出になったわ、こちらこそありがとう」

そして俺は再び病院に戻り俺は死に際に立った。

「オカン・・・じゃあな」
「天国でも思い出をね・・・」

俺はこの世を去った。いい人生でもあれば身勝手な人生でもあった。天国でも頑張ろう。
そしてオカン、センキュードライブだ。
もう一度言う、”オカン”センキュードライブ

<終>

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