垢BANされた時に、自分の人生が終ってる事に気付きました

文字数 743文字

「あんた、何で今の政府を信じる事が出来るんだよ?」
「はぁ? 何、今時、マスゴミの言ってる事信じてんだよ、この老害‼」
 よくある論争の筈だった。
 しかし、「老害」は差別用語に当るとされ、俺のアカウントは完全削除される事になった。
 まぁ、確かに、運営が「差別用語」と判断する事を散々言ってきたので、遅かれ早かれ、こうなるのは予想していた。
 猶予は1日間。
 その間に、俺が相手に謝罪し、相手がその謝罪を受け入れてくれないと……。

 とは言え、俺は、今まで、何度も別アカで復活したので、今度も、その手を使えばいいや、と思っていた。
 アカウント削除まで残り1時間を切った。
 別アカでの復活の手筈は全て整っていた……筈だった。
 いや、そう思い込んでいただけだった……。

「おい、ちょっと待て、俺の()()()()()()()が無いって、どう云う事だよ?」
「文字通りの意味です。貴方の体は、福祉切捨て政策に伴ない十年ほど前に破棄されました。ちなみに享年九十六ですね」
 最終通告に来た運営の職員は、とんでもない事を言い出した。
「あの……それじゃ……こっちのアカウントが削除されたら……」
「ええ、貴方の存在は、物理空間上に続いて、電脳空間上からも消えますね。何で、もっと早く確認しなかったんですか?」
「いや、だって、電脳空間上で、自発的に政府広報をやっていれば、体を保存してくれるって……」
「それ……デマですよ」
「何で、そんな事をみんな信じて……」
「みんなじゃないです。あなたを含めた一部の方しか信じてません」
「そ……そんな……人殺し……」
「諦めて下さい。貴方が支持していた現政権のスローガンは『自己責任』です」
 俺の存在が消えるまで、あと数分。
「で、死亡届の死因は『自殺』と『事故死(自己責任)』のどっちがいいですか?」
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