第1話

文字数 949文字

 あーあ、今日は雨が降りそうね。最近急に寒くなってきたので、お肌が心配だわ。上層階の方達って横雨が当たる時って如何してるんでしょう。それも台風では横からザーでしょ。然し、上から見下ろす景色は嘸かし優越感が有るんでしょうね。私ったら中層階だから何となく分かりますが、下層階の方達は眺めがよろしく無いわね。然も、陽当たりも少ないし。

 ねえ貴方、朝から私を掴んでいるんだけどさ、女性に対してはもう少し優しく丁寧に扱って欲しいんだよね。強く掴むと痛いんだけど分かっているの。私まだ体調が優れなくてさ、ほら見てよ顔が青いでしょ。全くなんて人なんでしょ。私よりも、ほら、右のお隣さんの顔みてよ、明らんで良い色合いじゃないの。えっ何、顔にあざの跡があるから駄目なのね、どうするの。パチンッ、キャーッて聞こえたけど貴方酷いね。私ね、お天道様にあたり健康的になりたいの。だからもう少し待ってくれる。

 半月後。ねえねえ、私とても健康的で綺麗になったの、ほら見てよ。前も後も良い色合いでしょう。あれから沢山お天道様にあたり健康的になったのよ。ほら早くしないと、私あざをつけられるのって嫌だからね。でもね、ここまで来るのは長かったわよ。私も必死に頑張った結果だもの。左のお隣さんと比べて見てよ。私の方が整った顔でしょ、分かる。お隣さんなんか少し班目模様でしょ。これじゃ好かれないよね。

 パチンって、いきなり痛いじゃないの。お肌に良くないわ。心の準備をしたいから前もって言って欲しいわ。私を連れて行くのは構わないけど乱暴にしないでよね。もう、こんなギューギュー詰の乗物じゃ私のお顔が台無しになる、困ったものね。あらっ、今度は転がさないでくれる、お顔に当たるじゃない。ちょっと女性の扱い方が乱暴ね。優しくして欲しいけど如何かしら。ふーん、お顔の容姿でクラス分するんだ、私はどのクラスかしら。

 長い時間、車に揺られて。とうとう、こんな所に来ちゃったわ。お友達も一緒にいるけど、皆に見られると恥ずかしいわ。ねえ、そこの方、私を優しくしてくれる。ひと皮むけば、いいお味なのよ。そうそう、優しく掴んで籠に入れてね。お代金はあちらね。貴方の家に連れてってから、お茶と一緒にこたつで味わって下さいな。

みかんのつぶやき
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み