第1話
文字数 2,498文字
ここは黒の大地、日々強者共が凌ぎを削る。弱肉強食を謳う世界だ。弱いものはすべからく淘汰されるだろう。その中でも頂点に君臨する者たちがいる。彼らは周囲から畏怖を込めてこう呼ばれていた。
<七ツノ大罪>と
「あら〜わざわざ出迎えありがとうルシファー」
「随分と早い帰還だなサタン」
「あの盗賊団全く歯応えがなかったわよ?」
「募る話は私の部屋でしよう。ついてこい」
言動に女性らしさを垣間見せる彼は大罪メンバーの一人サタン
その彼と対等に喋る六対の黒羽を持つ男ルシファー
黒の大地最強の大罪メンバーが二人
周りにいる召使い達も二人から溢れる強大な力に緊張を隠せないでいた。
「あれがサタン様...」
「なんて魔力だ...」
召使いがこそこそと話しているのを尻目に
ルシファーに促されサタンは彼の部屋に入る。
「さて、改めて任務ご苦労だった」
「別に私が行かなくても良かったんじゃないの?」
「今回の相手は手強いと聞いていたからな、素直に動いてくれるのがお前くらいだったんだ」
「ベルゼブブがいるじゃない?」
「他の任務にあたってる」
「ふんっ今度はもう少し骨のある奴をお願いするわ」
椅子に腰掛けたルシファーに対し、乱暴に壁に凭れるサタン、腕を組み横目にルシファーをみやる。機嫌が良くない様だ。
「とりあえず近隣の村々を荒らしていた盗賊は当分動けない程度に痛めつけておいたわ」
「部下から聞いている、全員重症で辛うじて息があるとな」
「当たり前よ、もう少し強くなってから出直してほしいわ」
「お前はいつも血の気が多いな、仮にも大罪の一人だもう少し気品を持たねばな」
「気品?はっ!そんなのが戦いで役に立つのかしら?弱い者は淘汰される、強さこそが全てよ?」
拳を掲げサタンは言う。ルシファーたっての願いだからと盗賊退治に赴いたがまるで相手にならない者ばかり。強者との戦いに生き甲斐を感じるサタンにとっては退屈凌ぎにもなりはしない。
「手強いとは聞いていたんだがな...」
「アンタ私を舐めすぎじゃない?確認がてら久しぶりに一戦どう?」
「お前と本気で戦ったら部屋どころか新しい地図を描かねばなるまい」
「は〜、どっかに居ないかしらねぇ...骨のある奴」
「我慢してくれお前に勝手に暴れられると後始末が大変だ」
「天界から堕天したアンタに着いていけば戦いには困らないと思ったのに、はぁ、退屈で仕方ないわ...」
「............」
ルシファーが何故堕天したのか、サタンの様な強大な存在を募り何を企んでいるのか。それはサタン含め他のメンバーも知り得ない。
彼の視線の先には一体何が映っているのだろうか。とは言うものの、戦いに快楽を求めるサタンにとってはさしたる問題でもない。
「まっアンタを認めた私の目を信じるわ」
「ふっ時がくれば存分に暴れようじゃないか」
「私は今暴れたいんだけどねぇ...」
「そういえば小耳に挟んだ情報がある、ある魔族の事だ」
「魔族ねぇ、誰?どうせ知らない奴でしょうけど...」
「シャイターンについてだ」
「......へぇ」
サタンの眉が微かに動く、その名を脳内で繰り返していくうち薄っすらと笑みを浮かべていた。
黒の大地で最強は、と聞かれれば大抵の魔族は大罪の名を挙げるだろう。だが例外もある
シャイターン、彼がその例外だ。
本来徒党を組まない魔族を己のカリスマ性で見事にまとめ上げ、当人の実力も大罪と肩を並べると言わしめる。いくらサタンといえども負けないことはないにしろ苦戦はするだろう。ゆくゆくはサタンの<戦ってみたいリスト>に入っている程の猛者だ。
他者の名に興味のないサタンが名を覚えている数少ない人物でもある。
「気になるか?」
「ええ、聞かせてもらおうじゃない」
「シャイターンが破れたそうだ」
「はっ...?」
予想外の衝撃が走る。あの男を?一体誰が?
「一対一の戦いで負けたそうだ。公にはなっていないがな、つい最近の話だ」
「私も初耳ね、デマじゃないの?」
「無理もない白の大地での話だからな、あちらは管轄外だ」
「ふ〜ん、アイツがねぇ...」
「相手は若い騎士だそうだ、お眼鏡に叶うと良いが?」
「久しぶりに期待しちゃうわね」
何故彼が白の大地に向かったかは謎ではあるが、あのシャイターンを退ける相手、一体どんな奴だろう。武器は?戦い方は?性格は?アイデンティティはあるのか?サタンの思考はまだ見ぬ強敵に胸を踊らせていた。
「どうやら答えは...無論か」
「ええ、でもアンタの情報網にはいつも脱帽だわ、白の大地に知り合いでもいるの?」
「さぁな、もう行くのか?」
「もちろん、先ずは挨拶しに行ってくるわ」
「お前のことは心配していないが...油断するなよ」
「はっ、誰に言ってんのよ?それとも友人のよしみかしら?」
「友人として、と言っておこう」
「不意に素直になられると調子狂うからやめなさい」
「ふっ、私とお前の仲じゃないか」
「あーはいはい、まったくこの優男め...それじゃ行ってくるわ......ね!!」
部屋の窓から勢いよく飛び出したサタン
瞬きをした時には点ほどまで遠くにいた。
「速いな、余程楽しみと見える」
不意にドアをノックする音が聞こえる
執事が入って来た。
「ルシファー様、サタン様、紅茶をお持ち...おやサタン様は?」
「ああ、急用と言って窓から帰ってしまった」
「おやおや、仕方のないお方ですなぁ」
執事は慣れた手つきでルシファーに紅茶を差し出す。サタンが突然居なくなるのは何時もの事らしい。
「我が友ながら忙しなくて困る。うむ美味い」
「ですがサタン様とおられる時は随分と機嫌がよろしいようで」
「アイツとは古い付き合いだからな、たまには近況報告でもしてのんびり語りたいものだ」
「ではお戻りになった際にサタン様にお伝えしましょう」
「いや、私から直接言った方が良いだろう」
「ほほほ、それは名案で御座います」
「友だからな...」
サタンが飛び立った先を見据えるルシファー
彼の姿はもう見えない。
帰ってくる時はどんな顔をしているのか
満足げな顔か、それともまた今日の様にご機嫌斜めか。
ルシファーは執事に手渡された紅茶を嗜みつつ、途中まで読み進めていた書物を手に取り、彼の帰りをまつのであった。
<七ツノ大罪>と
「あら〜わざわざ出迎えありがとうルシファー」
「随分と早い帰還だなサタン」
「あの盗賊団全く歯応えがなかったわよ?」
「募る話は私の部屋でしよう。ついてこい」
言動に女性らしさを垣間見せる彼は大罪メンバーの一人サタン
その彼と対等に喋る六対の黒羽を持つ男ルシファー
黒の大地最強の大罪メンバーが二人
周りにいる召使い達も二人から溢れる強大な力に緊張を隠せないでいた。
「あれがサタン様...」
「なんて魔力だ...」
召使いがこそこそと話しているのを尻目に
ルシファーに促されサタンは彼の部屋に入る。
「さて、改めて任務ご苦労だった」
「別に私が行かなくても良かったんじゃないの?」
「今回の相手は手強いと聞いていたからな、素直に動いてくれるのがお前くらいだったんだ」
「ベルゼブブがいるじゃない?」
「他の任務にあたってる」
「ふんっ今度はもう少し骨のある奴をお願いするわ」
椅子に腰掛けたルシファーに対し、乱暴に壁に凭れるサタン、腕を組み横目にルシファーをみやる。機嫌が良くない様だ。
「とりあえず近隣の村々を荒らしていた盗賊は当分動けない程度に痛めつけておいたわ」
「部下から聞いている、全員重症で辛うじて息があるとな」
「当たり前よ、もう少し強くなってから出直してほしいわ」
「お前はいつも血の気が多いな、仮にも大罪の一人だもう少し気品を持たねばな」
「気品?はっ!そんなのが戦いで役に立つのかしら?弱い者は淘汰される、強さこそが全てよ?」
拳を掲げサタンは言う。ルシファーたっての願いだからと盗賊退治に赴いたがまるで相手にならない者ばかり。強者との戦いに生き甲斐を感じるサタンにとっては退屈凌ぎにもなりはしない。
「手強いとは聞いていたんだがな...」
「アンタ私を舐めすぎじゃない?確認がてら久しぶりに一戦どう?」
「お前と本気で戦ったら部屋どころか新しい地図を描かねばなるまい」
「は〜、どっかに居ないかしらねぇ...骨のある奴」
「我慢してくれお前に勝手に暴れられると後始末が大変だ」
「天界から堕天したアンタに着いていけば戦いには困らないと思ったのに、はぁ、退屈で仕方ないわ...」
「............」
ルシファーが何故堕天したのか、サタンの様な強大な存在を募り何を企んでいるのか。それはサタン含め他のメンバーも知り得ない。
彼の視線の先には一体何が映っているのだろうか。とは言うものの、戦いに快楽を求めるサタンにとってはさしたる問題でもない。
「まっアンタを認めた私の目を信じるわ」
「ふっ時がくれば存分に暴れようじゃないか」
「私は今暴れたいんだけどねぇ...」
「そういえば小耳に挟んだ情報がある、ある魔族の事だ」
「魔族ねぇ、誰?どうせ知らない奴でしょうけど...」
「シャイターンについてだ」
「......へぇ」
サタンの眉が微かに動く、その名を脳内で繰り返していくうち薄っすらと笑みを浮かべていた。
黒の大地で最強は、と聞かれれば大抵の魔族は大罪の名を挙げるだろう。だが例外もある
シャイターン、彼がその例外だ。
本来徒党を組まない魔族を己のカリスマ性で見事にまとめ上げ、当人の実力も大罪と肩を並べると言わしめる。いくらサタンといえども負けないことはないにしろ苦戦はするだろう。ゆくゆくはサタンの<戦ってみたいリスト>に入っている程の猛者だ。
他者の名に興味のないサタンが名を覚えている数少ない人物でもある。
「気になるか?」
「ええ、聞かせてもらおうじゃない」
「シャイターンが破れたそうだ」
「はっ...?」
予想外の衝撃が走る。あの男を?一体誰が?
「一対一の戦いで負けたそうだ。公にはなっていないがな、つい最近の話だ」
「私も初耳ね、デマじゃないの?」
「無理もない白の大地での話だからな、あちらは管轄外だ」
「ふ〜ん、アイツがねぇ...」
「相手は若い騎士だそうだ、お眼鏡に叶うと良いが?」
「久しぶりに期待しちゃうわね」
何故彼が白の大地に向かったかは謎ではあるが、あのシャイターンを退ける相手、一体どんな奴だろう。武器は?戦い方は?性格は?アイデンティティはあるのか?サタンの思考はまだ見ぬ強敵に胸を踊らせていた。
「どうやら答えは...無論か」
「ええ、でもアンタの情報網にはいつも脱帽だわ、白の大地に知り合いでもいるの?」
「さぁな、もう行くのか?」
「もちろん、先ずは挨拶しに行ってくるわ」
「お前のことは心配していないが...油断するなよ」
「はっ、誰に言ってんのよ?それとも友人のよしみかしら?」
「友人として、と言っておこう」
「不意に素直になられると調子狂うからやめなさい」
「ふっ、私とお前の仲じゃないか」
「あーはいはい、まったくこの優男め...それじゃ行ってくるわ......ね!!」
部屋の窓から勢いよく飛び出したサタン
瞬きをした時には点ほどまで遠くにいた。
「速いな、余程楽しみと見える」
不意にドアをノックする音が聞こえる
執事が入って来た。
「ルシファー様、サタン様、紅茶をお持ち...おやサタン様は?」
「ああ、急用と言って窓から帰ってしまった」
「おやおや、仕方のないお方ですなぁ」
執事は慣れた手つきでルシファーに紅茶を差し出す。サタンが突然居なくなるのは何時もの事らしい。
「我が友ながら忙しなくて困る。うむ美味い」
「ですがサタン様とおられる時は随分と機嫌がよろしいようで」
「アイツとは古い付き合いだからな、たまには近況報告でもしてのんびり語りたいものだ」
「ではお戻りになった際にサタン様にお伝えしましょう」
「いや、私から直接言った方が良いだろう」
「ほほほ、それは名案で御座います」
「友だからな...」
サタンが飛び立った先を見据えるルシファー
彼の姿はもう見えない。
帰ってくる時はどんな顔をしているのか
満足げな顔か、それともまた今日の様にご機嫌斜めか。
ルシファーは執事に手渡された紅茶を嗜みつつ、途中まで読み進めていた書物を手に取り、彼の帰りをまつのであった。