地獄に落ちた天使

文字数 1,168文字

ヒュ――――……ドーン
ん?
なんだ?
人が落ちて来たぞ
亡者だとしたら閻魔様の判決を受けて地獄に来るはずなんだが……
いててて……
う~ん
どうも亡者とも違うようだ
とりあえず閻魔様に報告しよう
――――――――――――――――――――
で、お前は何者だ?
亡者だったら三途の川を渡ってあの行列に並ぶことになっているはずだ
えへへ……
えっーっと神様を怒らせてしまいまして
ほう
つまり神に直接地獄に落とされたのか?
珍しいことがあるものだな
で、一体どんな罪を犯したのだ
ちょっと嘘を吐いてしまいまして……
地獄で反省して来いと……
ふむ
神をそこまで怒らせるほどでもない気がするが……
まぁ良い
妄言は『大叫喚地獄』行きだ
6821兆1200億年反省してこい
えぇ!?
長すぎますよ!
連れて行け
はい
うわ~
ちょっと待って下さい!
僕には人間たちを救いに導く大切な使命があるんですぅ~!
なるほどな
そう言って何人もの人間を騙してきたわけだ
ち、違いますよ!
これは本当の話なんです!
分かった分かった
ほら、見えて来たぞ
あれが『大叫喚地獄』だ
ひぃ
なんですかあの大きな窯は!?
あの窯で湯を沸かして亡者を煮込むのさ
熱いぞ~
ひいぃ~!
『大叫喚地獄』はそれだけじゃないぞ
ほら、あそこで亡者が踊っているだろう
あれは足元が超高温の鉄板に鉄板になっているんだ
とても立っていられないんで踊っているように見えるのさ
あっちも面白いぞ
ほら、見えるか?
あの恐ろしい化物の姿が
地獄には俺たちのような鬼の他にもああいう化物獄卒がいるのさ
あの化物獄卒は一体何をしているんです?
亡者を弓矢で射てるのさ
彼は弓道の達人でな
狙った獲物は1km先の蟻ですら外さないんだ
ひ、ひいぃ~!
さぁ、お前はどこから行く?
大釜か? 鉄板か? 化物獄卒か?
や、やめて下さい!
お許しを!
あんなの死んでしまいますよ!
馬鹿め
お前はもう死んでいるんだ
これ以上は死にようがないだろう
そうだぞ
今のお前は言いかえれば不死身な訳だ
安心して逝って来い
そ、そんな~!
(まずいぞ
このままだと本当に大釜に入れられてしまう)
(かといってこの鬼二人を腕力で振り払うのはとても無理だ)
(そういえば、地獄にはもっと深い地獄があると聞いたことがある
かけてみるしかない)
ごめんなさい!
実は僕の罪は嘘を吐いただけでは無いんです!
実の両親を殺してしまったんです!
どうか、一番重い地獄に僕を連れて行って下さい!
何ぃ~!?
肉親殺しは最も重い罪の一つ!
お前には地獄の最下層『無間地獄』がお似合いだ!
この地獄の真ん中に空いた穴を2000年落ち続けると無間地獄!
気の遠くなる時間反省すると良い!
う、うわ~!!!
ヒュ――……



バサッ
ふ~
危なかった
あんなの流石の天使でも死んじゃうかもしれない
地獄って恐ろしいところだな
嘘一つ吐いただけであんな目に合うなんて
僕は人間じゃなくて良かった
さぁ
天界に戻って神様に謝ろう
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登場人物紹介

閻魔大王:
地獄の主
亡者の行く地獄を決める

???:
地獄に振ってきた男
その正体は……?

獄卒A

獄卒B

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