同窓会

文字数 694文字

「お前、変わったよなぁ。」
帰り際、友人が口にした。その友人は中学高校大学と学校への通学路を共に行き来し、他愛のない話から真面目な将来の話まで通学路という中途半端な時間の中で語り合った仲だ。
今となってはお互いに24の歳で周りに子供ができたり、結婚したりなんて日常茶飯事で、僕は金のないバンドマンで、その友人は小学校の先生だ。
僕たちはこの緊急事態宣言という無音のサイレンさえ無ければ、朝まで酒を浴びて、共に肩を組み歩いて帰る、それが日課だった。
その日はこれから2軒目という時に僕が帰ると言い出して友人が驚いた。僕はというと少しずつバンド活動が軌道にのり、バイトをしなくてもギリギリの生活ができるぐらいにはお金も入り、その代わりに毎日を忙しく日本中を点々としていた。その影響もあってか、明日は朝イチで東京へと向かう。そんな僕に彼は変わったと言った。僕はそれが癪に触って少し不機嫌になった。僕にとって自分が変わったねと言われることは、人格の否定と自分という人間の軸がブレていると言われてるのと一緒だったからだ。いつもなら執念か引き留めるのだが、不機嫌な僕をみて引き留めるのを辞めた、帰りながら昔はあーだったこーだったと話している、一切耳に入ってこないまま友人の家に着いた。友人は俺の肩を叩いて酔っ払った顔でこう言った。
「俺も変わったんだよ、明日も頑張れよ。」
ふと、なんでいつもみたいに執念く引き留めない理由を考えて知った。
変わるって事は必ずしも濁る事じゃ無いんだと気付かされた。
それから帰り道は、学生時代の通学路のようにキラキラして見えて、千鳥足ながらも歌を歌いながら帰ったのを今でも覚えている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み