Let’s!After Halloween Party!

文字数 1,211文字

世界にゾンビが充満したのが50年前。
人々はゾンビに怯え、逃げ惑い、人類は衰退し絶滅していくと思われた。

その画期的な対抗策が編み出されたのが10年ちょっと前。
あれだけ我が物顔で地球上の殆どの土地を練り歩いていた数え切れないほどのゾンビたちは、その対策によって数を減らしていき、今や荒野に追いやられ夜な夜な動物の死骸を隠れ食うだけの存在になった。

それでも、彼らの脅威が終わった訳ではない。

たまに人が襲われ感染者が出て、初期対策が遅れると下手をすると街や都市が閉鎖される。
でもそんなのはもう、一年に一度あるかないかになった。

それでも被害が減ったとしても、荒野などに隠れ住んでいるゾンビを探して始末する事は大切だ。
駆除を専門とする職業もあるが、たまに大きな群れが見つかって、街や都市を上げての大掛かりな「狩り」が行われる。

これには自己責任と言う制約はつくが、腕に自信のある民間人も参加が認められる。
普段は民間人による危機に瀕し身を守る以外の「故意の狩り」は、一般生活者を危険に貶める恐れがある為、法律で禁じられているが、大掛かりな「狩り」になると誓約書へのサインと感染を遅らせる予防接種をし登録を行えば参加できるようになる。

そして何気に、民間人はその狩りを楽しみにしている。
何しろ誰に咎められるでもなく、ゾンビに向けて専用ライフルをぶっぱなせるのだ。

ゾンビは無茶苦茶に殺していいモンスター。
日頃ストレスの溜まった人々の鬱憤のいい捌け口なのだ。
普通の動物を殺せば、同じ命なのにと騒ぎ立てる輩が必ず出てくる。
それがどれほど危険な生き物で駆除対象であろうともだ。
しかし、ゾンビは元々死んでいる。
死んでいるものを殺しても誰も何もいいようがない。

年配の人々は彼らの恐怖を知っている。
そして大切な人を殺された恨みがあった。

だが若い世代はある程度安全になった時代しか知らない。
それでも皆、大掛かりな「狩り」を楽しみにしている。
その為にシュミレーションを行い、実践訓練を行い、性能の上がった武器や防具、アイテムなどのチェックを欠かさない。
そして待ちわびた「狩り」に向かうのだ。

その際、彼らは叫ぶのだ。
武器を手に、嬉々としてその影を見つけるやいなや頭を打ち抜きながら……。

「Let's!After Halloween Party!!」と。

その際の彼らの興奮に血走った目を見ると、どちらがモンスターなのだろうと思えてならない。

世界はこれでよかったのだろうか?
モンスターが新しいモンスターに交代しただけではないのだろうか?

若い彼らが世界を回す年代になった時、私達はその答えを見るのだろう。




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この作品は小説投稿企画「After Halloween Party!」イラストD部門に参加するため創作したものです。ttps://www.pixiv.net/novel/contest/afterhalloween2023
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