第3話 怖い夢の話

文字数 624文字

僕は昨日すごく怖い夢を見て
夜中に目を覚ました。
ものすごく怖い夢だったんで、
もう一度眠ったら続きを見ちゃうんじゃないかと思って
眠るのが怖かったんだ。
それで一生懸命眼を開いて天井を見ていたのだけれど、
気がついたら朝になっていた。

「どんな夢だったの?」
お兄ちゃんが聞いたけれど、
僕はさっぱり思い出せなかった。
「なーんだ、夢なんか見なかったんじゃないの」
とお兄ちゃんは笑った。
でも、本当なんだ。
ものすごーく怖ーい夢だったんだ。

「それはね」とおばあちゃんが言った。
「思い出さない方がいいから思い出せないようになっているのさ」
「どうして?」
僕とお兄ちゃんは同時に聞いた。
「だってね、思い出したらもういっかい怖い思いをしなくちゃならないじゃないか」
おばあちゃんはニッコリして言った。
「何回も怖い思いをしなくていいように、忘れるようになっているのさ」

「ふーん」
本当にそうかもしれないなと僕は思った。

「人間はね、疲れた時や、病気をしたとき
ぐっすり眠ると体が元気になるだろう?
それと同じように、悲しいことがあったり、つらいことがあったときにね、
心の傷んだりゆがんだりしたところを夢が治してくれるのさ。
だから怖い夢を見ても、さっさと忘れておけばいいのさ」

「ふーん」
「おばあちゃん、その話、誰に教わったの?」
「誰にも教わらないよ。
おばあちゃんがそう思うのさ」

そうか、
僕もそう思うことにしよう。
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