第4話

文字数 2,269文字

試験官「────以上、14名!名前を呼ばれた方は私について来てください!」

ダイゴ「(う、嘘だろ…………)」

ダイゴは目の前の現実を受け入れられないでいた。

ダイゴ「(オタク試験……。完全に舐めていた……。満点ぐらい余裕とか思ってたが……)」

拭い切れない悔しさが、胸の奥から込み上げてくる。
これ程の屈辱を感じたのは久しぶりの事だった。

落ち込むダイゴの背中を、ド・ジョーが荒々しく叩いた。しかし、それは励ましなどではない。むしろその逆だ。

ド・ジョー「ガハハハハッ!ほれみろ!馬鹿はお前の方だったな!ガハハハハッ!」

ド・ジョーは落ち込む俺の傷口を、深く深くエグっていく。

ド・ジョー「あんなに俺のこと馬鹿にしてた癖になぁ?」

ダイゴ「~~~~~ッッ!!」

ド・ジョー「グフフッ、悔して声も出ねぇか?情けねぇや」

ダイゴ「だかましいわい!」

ド・ジョー「おや?喋れたのか!そう言えばダイゴくん点数幾つだったかしら?」

ダイゴ「(こんの野郎、お前ェもさっき聞いただろうに!)」

ダイゴ「うるっせぇな!94だよ94!なんか文句あっか!」

そう。俺は筆記試験に合格した。問題なのはその点数。俺が取った点数は「94点」。満点のつもりだった俺としてはこの時点でかなり動揺したのだが、追い討ちをかけるようにド・ジョーの取った点数は「98点」。なんと今回のゲームオタク筆記試験における最高点だったのだ。

ド・ジョー「ダァーッハッハッハ!!94!!」

ダイゴ「(クソ、腹立つ。究極に腹立つ)」

ド・ジョー「あら?お前ゲームの神なんじゃねぇの?それなのに94点とは、意外に神も対したことねぇみたいだな!ガハハハハッ!」

ダイゴ「(野郎ォ、調子乗りやがって……)」

ダイゴは不貞腐れ、ド・ジョーへ向けていた視線を横にずらした。ずらした視線の先にいたのは、プロ団体のオーナー、イガニだ。

ダイゴ「(あの男も筆記試験を通ったのか……。選手オファーの為だけに試験を受けた訳じゃないのか……?)」

ド・ジョー「おい!何ぼぉ〜っとしてんだ、さっさと行くぞ。お間抜けくん」

ダイゴ「うるせぇな、分かってるよ……」

俺は悔しさを胸に、ド・ジョーや他の合格者と共に実技試験会場へ向かった。

試験官「それでは、お入り下さい」

俺達合格者は広いスタジアムの様な場所に案内された。
スタジアムの中に入ると、そこには目を疑うような光景が広がっていた。

ダイゴ「こ、これは……」

ド・ジョー「すげぇ……」

スタジアムの中にはありとあらゆるゲーム機が大量に設置されていた。

ダイゴ「まるでゲーセンだな」

ド・ジョー「音ゲー、パズルゲー、シューティング、RPGにレースゲー、格ゲーにFPSにクレーンゲームも……。おいおい、こっちにはギャルゲーまであるぞ!」

試験官「そうです。この実技試験会場にはほぼ全ての種類のゲーム機が設置されています」

試験官「実技試験ではまず、この会場内にあるゲームの中から自分の好きなゲームを選んで頂きます」

試験官「30分の時間を与えますのでよく考えて選択して下さい」

────────
────
──

ダイゴ「ド・ジョー、お前どう思う?」

ド・ジョー「あ?何がだよ?」

ダイゴ「実技試験の内容だ。試験官はゲームをよく考えて選べと言った……。この言葉から考えられる試験の内容は……」

ド・ジョー「どんな内容であろうと、己の得意とするゲームを選ぶに越したことたァねぇな。俺ァ当然テリトスにするぜ。お前ェはどうすんだ?」

ダイゴ「う~ん、そうだな……。じゃあ、」

ダイゴ「()()()()()。やってみるか」

ド・ジョー「はあ!?ギャルゲー!?」

ド・ジョー「お前正気か?普段からやらねぇだろギャルゲーなんざ」

ダイゴ「やらねぇな」

ド・ジョー「だったらなんで?」

ダイゴ「だからやるんじゃねぇか。中身が分からねぇゲームってのはワクワクするもんだ」

ド・ジョー「なっ…(コイツ、これは試験だってのに)」

ド・ジョー「とんだイカれゲーム脳だな……。俺ァ忠告はしたぜ?」

ダイゴ「ああ、お前も落ちんなよ?」

ド・ジョー「フン、誰が落ちっかよ……」

俺達受験者はそれぞれゲームを選択し、全員ゲーム台の前に座った。

試験官「さて、皆さんゲームを選びましたか?それでは、プロゲーマーの方々に来ていただきましょう」

ド・ジョー「あ!?プロゲーマー!?」

試験会場の入口から、計14名のゲーマー集団がぞろぞろとやってきた。

ダイゴ「(受験者と同じ人数………)」

ド・ジョー「(っつーことは、)」

試験官「受験者の皆さんには、我々協会側で育成したプロゲーマーの方々と対戦して頂きます。彼らに見事勝利することができれば実技試験は合格です」

協会から選び抜かれたプロゲーマー達は、それぞれ対戦する受験者達の前に立ち、自己紹介を始めた。

エリン「私はエリン。()テリトスの世界王者です。対戦宜しくお願いします、()テリトスの世界王者さん。キシキシw」

ド・ジョーの対戦相手となるのは、メガネを掛けた細身の男。現テリトス世界王者であるエリンだ。エリンは眼鏡を輝かせながら、ド・ジョーを挑発してみせた。

スハラ「ボキの名はスハラ。人はボキをギャルゲーの達人と呼ぶ。ボキは全ての乙女を愛し、全ての乙女と心を通わせられる。チミにギャルゲーの極意と言うやつを教えてやるよ~、フヒヒw」

ダイゴの対戦相手となるのは、メガネを掛けた肥満体型の男。ギャルゲー専門のプロゲーマー、スハラだ。スハラは鼻息を荒げながらダイゴに自己紹介をした。

ド・ジョーとエリン。ダイゴとスハラ。プロゲーマーとしてのプライドをかけた戦いが、今まさに始まろうとしていた。
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