《MAILER-DEMON》

文字数 900文字

──たまにある、誤信。それが、全て間違いだったら……。一字違うだけで全く違う意味に変貌してしまう。




少女が楽しそうにスマホを操作している。
幸せの真っ只中なのだろう。
メールを送り、返信着信に大喜び。

「やっだー! 純ちゃんてばぁ! 超早いー! やっぱ、あたしたちラブラ……」

けれど、テンションは最後まで続かなかった。さっきまで緩みきっていた彼女の表情がひきつる。

「うそ……。あ! もしかしてアドレス変更中なのかも! 最近迷惑メール多いって言ってたし! 」

そう、彼女のスマホにとどいたメールはあの《MAILER-DAEMON》だ。アドレスが違っていたり、容量不足で受信できないといったお知らせメール。
昨日までちゃんとメール出来ていた。問題は、彼女が一切英語が読めないことだった。

「そ、そうだ。電話して聞こう。この時間いつも返してくれるし。きっとおうちにいるよ……」

震える手で短縮を押す。コール音が数回鳴り、音が止まる。

「あ! 純ちゃん? あたしだけ……………」

彼女の耳に聞こえてきたのは…………。

『お客様がお掛けになった番号は現在使われておりません。番号をお確かめになって、お掛け直しください』

番号が繋がらない。大好きな彼氏と連絡が取れない。パニックになりかけながら、何度も何度も短縮を押す。間違いだ、悪い夢だと思いながら。

『お客様がお掛けになった番号は………』

──プツッ

『お客様がお掛け……………』

──プツッ

『お客様………』

──プツッ

何度掛けても繋がらない。

「昨日も一昨日もメールしたし、電話もした! なんで? なんでいきなり繋がらないの?! 」

泣きながら、確認しようと履歴チェックを始めた。
そこには…………。







送信履歴には登録された名前などなく、無機質なアドレスと番号が表示されていた……。
受信履歴には────。














ただひとつ。
《MAILER-DEMON》からの返信。
《MAILER-DAEMON》ではなく、《MAILER-DEMON》からの………。



END
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