ぼくは鏡?(1)

文字数 378文字

「ぎらきら輝く鏡から目が離せなくなったの」彼女はぼくを見ながらそういった。
「それで、どうしたの?」
「どうもこうもないわ。だからこうして何年間もあなたのまえに座りっぱなしなんじゃない」
「おかしいな、ハハハ、それじゃぼくが鏡だということになってしまうじゃないか」
「そうよ。なにもおかしなことなんかじゃないわ」彼女はぼくのいったことに機嫌をそこねたようだった。
 午後になったばかりだ。クーラーが効いて室内は涼しかったが夏の盛りで、外は死人がでても不思議ではない蒸し暑さだろう。
 ぼくは自分を雑誌THE NEW YORKERだと思っていた。性自認を格段におしすすめた結果、ぼくは自分をその雑誌だとおもっていたのだ。
 おもいこみだったのだろうか?
「鏡であることは素敵なことよ」彼女はお世辞ではなくて、よく考えたうえでのことのように、思慮深い顔でぼくをみつめていった。
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