第6話
文字数 926文字
急に音楽が止まった。
楽団に目を向けると第二王子が止めるように指示をしていた。
静まりかえる会場で、彼は口を開いた。
会場がざわつき、騒ぎはそれだけでは終わらなかった 。
第二王子の隣に、ヴィヴィアンの代わりの立ったのは、金色の髪に青い瞳の、僕が学校に送り込んだ優しそうな女性。
ヴィヴィアン様が動く
反射的に僕は彼女を追った。
会場を走り抜け中庭に出た彼女に、僕はやっと追いついてその手を掴んだ。
これまで十六年生きてきて彼女に触れたのは初めてで、そのあまりの柔らかさにすぐに手を放した。
彼女は真っ黒の瞳で僕を睨み、胸をそらして高飛車な態度だった。
お父様が教えてくださったの。
殿下が嫌になるくらい、ケイラが諦めるくらい、イジワルの仕方を教えてくれたわね。
どれも全部失敗したけど。
殿下もケイラも最後の方は分かちゃったみたいで。
リック!
どうして諦めたの?
もう私の事、嫌いになっちゃったの?
涙が滲んだ瞳。
怒って上気した薔薇色の頬。
目のやり場に困るくらい色気がただ漏れだ。
婚約破棄されたばかりの彼女。
今聞くのは間違っている。
だけど堪らず聞いてしまった。
こうして僕の幼馴染の悪役令嬢は王子に婚約破棄され……僕とまた婚約した。
あんなに意地悪で怒りっぽかったのに、ヴィヴィアン様は変わってしまった。
それが残念だと思っていたらやっぱり意地悪だったというのは別の話で。
(おしまい)