抜け作バトルロイヤル

文字数 933文字

 俺は激怒していた。
 必ずや、与党の大臣クラスの政治家達の政治生命を断った黒幕を罰せねばならぬと決意した。
 だが、おかしい。
 大臣経験者や現閣僚を含めた数十名の与党政治家の政治生命が断たれるほどの捏造スキャンダルにも関わらず……次の選挙の得票予想では、野党第一党も野党第二党も、思いの他、議席を増やしそうになかった。
 ざまぁ見ろ、多くの国民は何が真実かを知っているのだ……と言いたいところだが、有能で愛国心に溢れた与党政治家の多くが起訴されてしまった今、彼らを失なった与党は少しづつ弱体化していくだろう。
 何て事だ……今はまだ良くとも、5年後、10年後に、この美しい日本は……奴らの魔の手に……。
 って、奴らって誰だよ?
 あ、次の選挙で議席数を増やすと予想されてる政党が1つだけ有った。

 選挙戦が始まって、最初の休みの日、俺は、その政党の党首の街頭演説の場に居た。
 殺すべき極悪人は……クソ、選挙カーの上。
 周囲を用心深く移動しても……駄目だ、どこに移動しても、選挙スタッフらしき奴の誰かの視界内に入ってしまう。
 しかも……。
 マズい。
 私服だが、明らかに目付きが鋭いヤツが周囲に注意を払っている。
 それも……何人も……。

 休みの日ごとに、俺は、奴の「おっかけ」をやった。
 選挙スタッフの顔は変っても……聴衆を装っている目付きの鋭い奴らの顔ぶれは変らない。
 おそらく、奴らは……サクラ 兼 護衛なのだろう。
 奴らを何とかせねば……標的を殺傷するのは無理だろう。

 ついに明日が投票日だ。
 だが……今日も、あのサクラ 兼 護衛どもが周囲に居る。
 結局、巧い作戦を思い付く事は出来なかった。
 多分、俺は標的に辿り着けないまま失敗するだろう。
 それでもやるしか無い。
 俺が、懐から武器を取り出そうとした瞬間……サクラ 兼 護衛どもも懐に手を入れ……。

『本日、最初のニュースです。
 △△県◇◇市で、○○党党首の××氏が応援演説を行なっている際に、聴衆が乱闘を始めました。
 乱闘に加わった容疑者は全員が刃物などで武装しており、警察の取調べに対し、全員が××氏を狙ったと供述しています。
 警察は、容疑者全員が他の容疑者を××氏の護衛と勘違いして、最初に攻撃を加えたと見ており……』
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