焰の狐と僕

文字数 1,061文字

僕は大好きな釣りをしていた。
海はとても綺麗だ。
テンションが上がる。
釣り竿がビクッと動く。
思いっきりリールを引く。
やがて影が見える。
上に上げると釣れた。
イカである。
そこそこ大きい。
母に教わったちょっとした処理をして
氷の入ったクーラーボックスに入れた。
再びルアー(疑似餌)を海に投げようとした時。
バシャバシャと水を叩くような音が聞こえた。 
ふと下を見たら何かが溺れかけていた。
人間ではない。獣のようだ。
助けないと。
そう思い近くにあるバケツに落ちている紐を
括り付けてバケツを横向きに垂らした。
それに気がついた獣はバケツの中に入る。
バケツを上げる。
重い……。
ようやく引っ張り上げて獣をバケツから出した。
これは獣……?
紅いのだ。鮮やかな赤色の毛並み。
獣はブルブルと震えた。
獣は狐だった。
『助かったのだ。』
聞こえた。何処から??
あたりを見渡しても僕とこの狐しかいない。
『吾輩だよ。目の前にいるのだ。』
目の前……狐…!?
「狐……?」
『当たりだよ。助けてくれてありがとうなのだ。』
「あ、うん。」
狐と話しているのは謎すぎる。
今まで喋る動物を見たことあるだろうか?
インコぐらいだろう。(物まねだが。)
『突然だがお主の家に吾輩を連れて行ってくれ。』
本当に突然だ。
「でも…親が許さないと思うよ。」
というと
『吾輩は誰にも見えなくする事が出来るのだ。』
すごく怪しすぎる。
喋る事さえ怪しいのに姿消すなんて
怪しすぎる。
だけど怪しさと共に好奇心も少しある。
だから
「わかった」
と言った。
「でもその前に。君は何故僕の家に行きたいの?」
『その事についてはお主の家についてからなのだ。話したい事があるのだ。』
「話したい事……?」
『そうなのだ。』
「分かった。あの…もう一回だけ釣りしていい?」
帰る前にどうしてもしたかったのだ。
狐を助けて出来なかったから。
『だからここにいたのだな。いいぞ。』
「ありがとう。」
そう言って再びルアーを海に投げ入れる。
「ところで名前ってあるの?」
前を向きながら僕は言う。
『特にないのでお主が決めてほしいのだ。』
「名前ね……う〜ん。炎のように赤いから
(れん)】は?」 
『煉、かっこいいのだ!よろしく頼むのだ!
時雨!』
えっ……?
「何故名前知ってるの?」
『それも加えてお主の家についてから
話すのだ!』
何故僕の名を知っているのか。
そもそもこの出会いは偶然か必然か。
全ては神のみぞ知る…のかもしれない。
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