プロット

文字数 2,084文字

 日本のへそと呼ばれる岐阜県(ぎふけん)は、その異名通り日本の中央に位置している。それが影響(えいきょう)しているのか、岐阜県はあやかしの目撃情報(もくげきじょうほう)が多く、古くから、あやかしの中心地「あやかしのまち」としても有名だった。


起)
 岐阜県の中学校に通う神田京之介(かんだきょうのすけ)は、放課後、同じクラスの望月昇(もちづきのぼる)が森へ入っていくのを見かける。昇は運動神経も頭も良いから女子にモテる。京之介は昇と喋ったことは無いが、制服が汚れるのもおかまい無しに森に入る昇が気になってついていく。
 昇は、大きな木の小屋の中へと入っていく。京之介が入口から小屋に入ると、突然、木の棒をのどに当てられる。木の(ぼう)を向けてきたのは昇だった。
「どうして(おれ)をつけてきた?」
 怒る昇の後ろの(かべ)に、何枚も地図が貼られている。それが気になる京之介は、質問を無視して聞き返す。
「望月はここで何してるの?」
すぐに「関係ない」と答える昇だったが、
「答えてくれるまで帰らない」と言う京之介に根負けする。

「俺はこの基地(きち)で、あやかしMAPを作ってるんだ」


承)
 あやかしMAPとは、
【岐阜県内に住むあやかしの生息地(せいそくち)(しる)した地図】
それを昇が勝手に命名した地図のことだった。
 京之介は正直な感想としてまず最初に命名センスが無いと言うと、その時点で追い出されてしまう。なぜそんな地図を作ろうとしているのか疑問に思う京之介。
 家に帰り県内のあやかしについて調べると、あやかしは昔は生息していた伝説の生き物として今も(かた)()がれていたいる反面、未だに目撃(もくげき)情報は少なからずあると知る。あやかしの種類をざっと(なが)める京之介。その中の一つに、京之介が思わず声を上げるあやかしがいた。
 京之介は小学校低学年くらいの(ころ)に、あやかしと出会っていた。そのあやかしの名前は烏天狗(からすてんんぐ)。家族でピクニックに出かけた際、迷子になった京之介を、烏天狗は両親の元まで送り届けてくれた。その時の恩人(おんじん)を烏天狗だと思う理由は、烏天狗の特徴(とくちょう)に、時間を(あやつ)るとあったから。そして一瞬だけ見えた容姿が、天狗(てんぐ)と似ていた気がするから。

 しばらく考えた京之介は、再び昇が基地としている森の小屋へ。基地の中では、昇が一人で作業をしていた。机に置いた地図に赤ペンをはしらせる昇の顔は一生懸命そのもの。学校では見せない顔つきに京之介も真剣な気持ちになる。
「冷やかしなら帰ってくれ。別にこのことを誰かに言ってみんなで俺のことをバカにしたって構わない」
 京之介はその言葉に腹を立て、昇の肩をつかむ。
「俺はそんなやつじゃない、それに、バカにだってしない」
 京之介の真剣な言葉に、昇は驚きながら言う。
「じゃあ、何でまた来たの」
 京之介は、意を決して気持ちを伝える。

「僕にも手伝わせて欲しいんだ、あやかしMAPの作成を」
 過去にあやかしと会ったことがあると語る京之介に、昇も自身にも似た体験があると語る。
 昇がその体験からずっとあやかしを探し、あやかしを調べ、いつかあやかしと人が共存する世の中にしたいと思い、その足がかりとしてあやかしMAPを作成していると知り、京之介はその熱意に心が(ふる)える。自らもその力になりたいと感じた京之介が改めて頼むと、昇は仕方ないと承諾(しょうだく)した。

「条件は、あやかしMAPという名前を認めることだ」
「それは厳しい条件だなあ」



転)
 あやかしMAPの作成に本格的に乗り出す二人。まず互いにあやかしらしきものを目撃した場所を洗い出し、学校の友人、そして町の人にも聞き込みをした。制服を着て夏休みの宿題のテーマですと言い切ると、町の人も愛想良(あいそうよ)く話をしてくれる。クラスメイトに見つかった時、昇は身構(みがま)えたが、皆は頑張(がんば)れよと背中を押してくれた。
 集めた情報を元に、この近くの別の森に何かしらのあやかしが生息していると考えた二人は、夏休みにその森へと向かう。森での野宿も視野(しや)に入れ、寝袋(ねぶくろ)懐中電灯(かいちゅうでんとう)、カップ(めん)などを備え山に入るが、想定もしていないピンチが襲いかかる。いくつかは自力で解決するも、これはまずいと二人がなった時、誰かが助けてくれる。
 それは京之介が過去に出会った烏天狗だった。
 京之介は過去のお礼を伝え、昇はあやかしMAPの作成を伝える。
 烏天狗はあやかしMAPの作成に全面的な賛成はしないが、応援はしてくれると言う。その気持ちちして、一枚の葉っぱをもらう。その葉っぱは困ったら一度だけ烏天狗を呼べる葉っぱ。烏天狗は頑張れと言い、京之介と昇を家に返して自分も()る。



結)
 無事に烏天狗を見つけた京之介は、もうあやかしMAPを手伝う理由がなくなった。それは昇も分かっており、基地で別れと感謝の挨拶を口にする。
 しかし、京之介はその言葉をどうにも素直に受け取れない。自分はまだ、昇とあやかしMAPを作成したいと思っていることに気づく。
 今度はお願いではなく、対等な友だちとして京之介は昇に声をかける。
「僕はまであやかしに会いたい。だから、あやかしMAPに協力してやろう」
「随分と上からだね」
 (いや)そうな顔をする昇も、徐々に頬をゆるめ笑う。これからは二人でMAPを作るその第一歩として、地図上の烏天狗と会った場所に二人で(しるし)をつけた。

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